書かずに文章がうまくなる!? 文章を書くのが苦手な人にオススメする思考トレーニング

文芸・カルチャー

2015/8/27

 『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)の著者であり、18年間で2300件以上の執筆経験を持つフリーライター・山口拓朗氏はこう断言する。

 日本人は、文章を書くのが苦手だと思っている人が多いそうだ。それは学校で教える国語は、読解力にウエイトを置いていて、「文章の書き方」も教師によって教え方がバラバラであるからだと指摘する。

 現代人にとって文章を書く技術は必須スキルである。大学生であれば講義でレポートを書くし、社会人になれば仕事で報告書を書く、プライベートでも家族や友人とメールのやりとりをしている。文章を書かなければならない機会は毎日あるのに、私たちはちゃんとした「文章の書き方」を教わったことがない。改めて考えるとこれは奇妙な事実だ。

 本書では、文章を書くのが苦手な人に向けて、書かずに文章力を上げる様々なトレーニングを紹介している。これまで「文章力の向上には、とにかく書くこと」と言われてきた人も少なくないはず。しかし山口氏の方法論はまるで正反対。書かなくても文章力が上がる方法とは、いったいどんなものなのか。

STEP1 「読み手本位」を意識して読者を知ろう

 文章力向上の第一歩は「読み手本位」を意識することだ。「読み手本位」とは、誰が読むのかを意識して読者ニーズを押さえた文章を書くということ。例えば、上司に企画書を提出する場合、その上司が求めるのは採算性なのか、コストなのか、社会貢献なのか、目新しさなのか、情熱なのか、主張を明確にすることで企画書の評価は変わる。自分の書きたいことばかりを書いて、相手が欲しい情報が伝わらない「書き手本位」の文章になってしまわないように、まず読者を知ることが重要なのだという。

 「読み手本位」を意識する方法として本書で薦めているのが「贈り物トレーニング」。身近な家族や友人にプレゼントをして、相手に喜ばれるかをみてみるというもの。例えば、子供が生まれたばかりの人にベビー用品を贈ってみたり、疲れた人にお菓子を差し入れたり。贈り物は品物でなくても、作業を手伝ったり、悩みを聞いたり、相手が喜ぶことであれば何でも良いのだそうだ。当然、相手の好みや価値観について、事前のリサーチが必要になる。このトレーニングを繰り返すことで読者の興味やニーズを分析する思考プロセスが身に付いていくのだという。

STEP2 「長期記憶」を増やして記憶力を磨こう

 文章を書くということは、脳にインプットしてある情報をアウトプットすること。脳の記憶には一時的に記憶する「短期記憶」と、長い期間でも記憶していられる「長期記憶」がある。「長期記憶」はその人の内蔵辞書であり、記憶量が多いほど、言葉を引き出すことができる。記憶力は文章力に繋がっているというのが山口氏の主張だ。そして「短期記憶」から「長期記憶」へは、入ってきた情報を理解して自分の内で整理する過程で定着するのだという。

 その「長期記憶」を増やすための練習法が「話す・書くトレーニング」。日常の体験談を誰かに話してみるというもの。例えば、「今日の昼食は駅前のカフェでナスとひき肉のキーマカレーを食べたよ。レタスとトマト、キュウリのサラダ付きで夏野菜が豊富だった。辛さでたちまち汗が出て、冷水をコップに三杯も飲んでしまったよ。皿は白無地のプレート、フォークとスプーンは真鍮製だった。それで値段が580円は安いと思ったよ」というように、相手は誰でも、どんなことでもよく、またひとりでも簡単なメモ程度を書き留めるだけで効果が見込めるのだという。

●文章力は日にして成らず すべての道は上達に通ず

 上記で紹介したトレーニングは、本書にある30のトレーニングのうちの最初の2ステップである。解説を読むだけであれば簡単に思えることも、実際に試してみると普段はあまり使っていない思考を働かせなければならないため、予想外に手間取った。この後、さらに実践的なトレーニングへと移っていくが、まずは基礎的なトレーニングからマスターして段階を踏んでいくべきだと感じた。

 やはり文章力を上げるのに楽な方法はないのだと痛感する。しかしそれでもトレーニングを続けると最初の時よりは思考が最適化されて、思考速度が少しずつだが速くなっているのが体感できた。毎日の生活のちょっとした合間にゲーム感覚で楽しく続けられるトレーニングになっている。これまでの文章を書く練習法では望むような習熟が得られなかったという人は、こちらの方法を試してみてはいかがだろうか。

文=愛咲優詩