「リア充じゃないから作家になれた」“粘膜作家”飴村行インタビュー|夏のホラー部第4回

公開日:2015/8/29

●怒りのエネルギーはデビュー前の2.5倍

――『粘膜』シリーズの次回作も気になるところです。『~人間』『~蜥蜴』『~兄弟』『~戦士』と来て、5作目はどんな作品に?

飴村:次は『粘膜乙女』というタイトルになる予定です。プロットの段階ではこれまでで一番評判がいいんですよ。『粘膜』シリーズはライフワークとして書き続けていくつもりです。

――熱烈なファンが多いので、プレッシャーもありますね。

飴村:「辛さだけを求められるカレー屋」みたいになっている面があって、悩ましいですね。どれだけルーのコクや具材にこだわっても、刺激が足りないと怒られる。初期のエグさを残しつつも、ストーリーや設定で新しさを出す、という二律背反をクリアするのが難しいです。

――本が売れないと言われて久しいですが、ホラー作家として生活する厳しさは感じますか?

飴村:それは関係ないです。バブルの時代だろうが大不況だろうが、売れる本は売れるし、売れない本は売れないんです。自分が新しいジャンルを作るんだという気持ちで書いていますから、出版不況で不安になることはありません。

――それは力強い!

飴村:だから、次の作品はおそらく『火花2』になると思います。

――さらっと何を仰るんですか……!

飴村:寄せるべきところはがんがん寄せていきますから。ペンネームも「又村行」とかに変えるかも知れません。

――……。デビューから6年経って、10代の怒りのエネルギーは枯れていきませんか?

飴村:まったく枯れません。むしろデビュー前に比べて2.5倍くらいに増えていますね。ああすればよかった、こうすればよかったという後悔が未だに強くて。青春時代に何もなかったからこそ、延々悔やみ続けているんですよ。普段は忘れていても、スターリンとか1980年代の音楽を聴くと、ふつふつと蘇ってきます。永遠に燃えさかるキャンプファイヤーみたいなものですね。

――では今後の予定があればぜひ。

飴村:『本の旅人』で連載していた『チアノーゼ・ドッグス』という作品を、大幅加筆して単行本にする予定です。これは北野武さんの映画みたいなバイオレンスもの。他にも新しい連載を始める計画があります。最近やっと体調が戻ってきたので、次々発表していきたいと思っています。

――期待しています。これからも悶々とした衝動を表現し続けてください!

取材・文=朝宮運河

(プロフィール)
飴村行●1969年、福島県生まれ。東京歯科大学中退。2008年『粘膜人間』で第15回日本ホラー小説大賞長編賞を受賞。デビュー第2作『粘膜蜥蜴』で第63回日本推理作家協会賞を受賞。特異な作品世界で注目を集める。著書に『粘膜兄弟』『粘膜戦士』『路地裏のヒミコ』『ジムグリ』など。

(書籍情報)
ジムグリ
著者:飴村行
出版社:集英社
価格:1700円(税別)