“フェス系バンド”を感化させたマンガ&アニメ

アニメ・マンガ

2015/8/29

 今や夏の定番となりつつある音楽フェスには、今年も熱いバンドがたくさん出演している。中でも注目されるのが「キュウソネコカミ」。世の中に対しての愚痴やディスり(悪口)が中心の歌詞や、ファンと一体となるパフォーマンスが特徴だ。また、アルバムジャケットのほとんどがイラストで、“ネズミくん”というマスコットキャラクターがLINEスタンプになったりと、かわいいと評判のバンドでもある。

 そんなキュウソネコカミが2012年に発売したアルバム『大事なお知らせ』に収録されている『オリジナリティ』は、ヤマサキセイヤ(Vo/G)の“平凡に生きるな、多数派なんてつまらないだろ”という思いが込められた、ドラムの打ち込みが激しいとてもインパクトのある曲だ。この曲には、「グロい漫画に読み飽きたら、浅野いにお開くよ、浅野いにお飽きたら、荒木飛呂彦開くよ」というマンガや漫画家から影響を受けたと思われるフレーズが入っている。

『ドラゴンボール』

 また、キュウソネコカミは、今年1月にフジテレビ系アニメ『ドラゴンボール改』のエンディングテーマ「GALAXY」という曲を担当したことでも話題となり、人気は急上昇。実は、キュウソネコカミが主題歌を担当した経緯というのも、2012年発売のアルバム『10代で出したかった』収録曲の「お願いシェンロン」がきっかけ。歌詞に「かーめーはーめーはーー」と叫ぶ箇所があり、それを聞いたアニメ『ドラゴンボール』の製作関係者が、ぜひ同アニメのテーマ曲をキュウソネコカミに担当してほしい! ということで彼らにオファーをしたそうだ。

 このように、『ドラゴンボール』からインスパイアされて曲を書いたバンドはほかにもある。たとえば、マキシマムザホルモンの『F』もまた、同作から影響を受けて誕生した曲だ。

・マキシマムザホルモン『F』
 2008年に発売されたマキシマムザホルモンのシングル『爪爪爪』のカップリング曲『F』。マンガ『ドラゴンボール』の登場キャラ「フリーザ」をイメージした楽曲で、タイトルもフリーザの頭文字を表したという。著者の公認を得て制作されたものではなかったため、同作の用語が登場する部分の歌詞は伏せ字となっている。だが、のちに原作者の鳥山明氏がライブでこの曲を聴き「えげつなくカッコいい」と評したことから公認の曲となった。さらに、鳥山氏はこの楽曲から着想を得て劇場版『ドラゴンボールZ 復活の「F」』を製作したとインタビューでコメントしており、同作の挿入歌にも起用された。曲にインスパイアされ、新作映画が公開された珍しい例だ。

 『ドラゴンボール』ほどのマンガになると、多くのアーティストが影響を受けている様子。さすが鳥山先生、といったところ。そんな、同作以外にも“インスパイア系”楽曲のモチーフとなっているアニメが『新世紀エヴァンゲリオン』だ。

『新世紀エヴァンゲリオン』

・BUMP OF CHICKEN『アルエ』
 地上波にはほとんど出演せず、フェスで観客を虜にするBUMP OF CHICKEN。藤原基央(Vo)が、エヴァのヒロインのひとり・綾波レイに本気で恋をしたことで作られた『アルエ』は、綾波レイのイニシャルR.A(アールエー)を曲名にして作詞作曲された。「私は独りで平気なの」「嬉しい時どんな風に笑えばいいか解んない」など、歌詞にも彼女のセリフを連想させる言葉が散りばめられている。この曲こそ、アニメから影響を受けた代表的な楽曲といってもいいのではないだろうか。

・L’Arc-en-Ciel『あなた』
 90年代後半に大ブレイクし、活動休止を経て2004年に活動再開を果たした人気バンド・L’Arc-en-Ciel。エヴァの人気キャラ・惣流・アスカ・ラングレー(以下、アスカ)の大ファンであるリーダーのtetsuyaが、アスカに向けて作った『あなた』もエヴァからインスパイアされた曲だ。tetsuyaは、旧劇場版の『エヴァンゲリオン』を見て「アスカへ向けて“心を開いてくれ”という思いで作ったもの」と過去に発言している。歌詞に出てくる「あなた」=アスカを指すことはファンの間では有名な話のようだ。この曲のイントロを聴いただけで、アスカのことを思い浮かべる人も多いのでは?

・speena『ジレンマ』
 2000年にデビューした女性3人組バンドspeena。タイトルの『ジレンマ』とは、アスカの心情をモチーフにしており、主人公・碇シンジに対する彼女の想いと、その想いに反して愛憎に近い感情をぶつけてしまう“ジレンマ”を表現しているとか。歌詞に出てくる「あなたが全部あたしのものにならないなら あたし何もいらない」というフレーズ、エヴァ好きなら思わず反応してしまうはず。

『宇宙兄弟』

・真心ブラザーズ『サニー』
 『サマーヌード』などの代表曲を持つ2人組バンド、真心ブラザーズ。『宇宙兄弟』の作者・小山宙哉と真心ブラザーズが、互いにファンだったということから実現したコラボレーションソングが『サニー』だ。まさにマンガのような話だが、真心ブラザーズが『宇宙兄弟』を読んだとき、猛烈な創作意欲が湧き出てどうしようもなくなったそう。そうして一気に曲を書きあげ、『サニー』が誕生し、小山宙哉は曲に合った1枚のイラストを描いた。両者共に「兄弟(ブラザーズ)」を冠するのも縁を感じるところだ。

 どれも、マンガと楽曲が化学反応を起こした名曲ばかり! これからお気に入りバンドの楽曲を聴くときは、歌詞に注目して聴いてみると、あなたの好きなマンガのセリフがひっそり隠れていたりするかも?

文=古賀サチ子(清談社)