言葉で物事を割り切ろうとする文系は、理系よりはるかに理屈っぽい

社会

更新日:2015/9/1

【理系の考え方~その2~】日本の官僚の優秀さは無駄なもの

 おそらく世の中の人間を大きく文系と理系に分けると、文系がメジャーだと思う。だからきっと、世の中の仕組みの多くは文系の考え方に基づいている。しかし、理系が理想の人間社会について考えると、まったく違うものになるようだ。

「スマートニュース」運営者でもある鈴木健氏は、国民が自分たちの手で法律を変えていく社会を提唱している。たとえば、行政は1日2時間ほどのボランティアで十分だと説く。なぜなら、そもそも官僚とは、法律に書かれたことを淡々と実行するための「モーター」であり、裁量の余地があってはならないものだから。日本の官僚がそんなに優秀である必要はないと指摘している。

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 思えば、世の中にまかり通っているルールなんて曖昧なことばかり。「そういうものだ」という理屈として“記憶”しているだけかもしれない。「抜本的に~」とはよく使われる言葉だが、「言葉で言うのは簡単だけど…」と、なんだか腑に落ちないことも多い。そこに「前提」が加わると、途端に説得力が出る。単なる夢物語ではなく。

 本書では他にも、STAP細胞や原発、日本の謝罪問題など様々な社会問題についても語られている。

そこにあるものは、しょうがない。存在を許容して理論を組み立てる

 世の中で最も答えを出しづらい分野として「哲学」が挙げられていたが、もし理系の「哲学」を取り上げるならば、こういうことだろうか。養老氏は次のように述べている。

存在しているものに対して、けしからんと言ってもしょうがない。そこにあるものは、一応認める。それから、なぜこんなものがあるのかと考える。まず存在を許容しないと、一般理論は作れないですよ。
(※一部中略)

 本書は、文系がなかなか足を踏み入れることがない「理系」という分野について知るための入門書とも言える。最初に文系と理系の違いが示されることによって、その後に続く彼らの考え方が捉えやすくなっている。決してハードルは高くないし、専門用語ばかりで解読不能といった心配もない。

 むしろ読後は、(文系らしい言葉を使うと)脳みそのどこかの使っていなかったダムが崩れて、新鮮な水がザザーッと流れ込んできたような爽やかな気分だ。

 文系の人は、理系の彼らが言うように、自分と違う考えを許容する探究心(文系なら、これを“柔軟さ”と言いそう)や、常に物事を「なぜ?」と捉える視点を取り入れれば、世界はもっと輝いて見えるかもしれない。

文=麻布たぬ