イケメンが甘いセリフを毎日囁いてくれたら…恋愛コンテンツ世界一・ボルテージの秘策

業界・企業

更新日:2015/9/7

 「ずっと……離さないから」、「今夜、そっち行ってもいい?」なんて甘~いセリフをイケメンが囁いてくれる至福のひととき。スマホアプリ上で、そんな秘密の恋をした経験がある女性も少なくないだろう。

 女性向けの恋愛コンテンツは、スマホの普及によって、どんどん市場規模を拡大している。そして、数多ある女性向け恋愛ゲームを扱う企業の中でも他社と一線を画しているのが株式会社ボルテージだ。

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 1999年創業の同社は、2006年から女性向け携帯恋愛ゲームをリリース。それ以降、『恋人は専属SP』『吉祥寺恋色デイズ』などのヒット作を経て、毎年6~10本の新作タイトルをコンスタントに配信し、2015年(7月)現在では累計で26,004,000人のユーザーを抱える恋愛コンテンツ界ゲーム界のパイオニアだ。その年商、なんと100億。東証一部上場を果たしてなお、大躍進を続けているボルテージ。

 そんな彼らの秘密を余すことなく記したビジネス書『「胸キュン」で100億円』(上阪徹/KADOKAWA 角川マガジンズ)が話題を呼んでいる。そこで今回は、同書で紹介されている“ボルテージ流の女ゴコロの掴み方”の一部をみてみよう。

“胸キュン”の工夫が随所にちりばめられている

 この『「胸キュン」で100億円』には、ユーザーへの取材コメントも多く使われている。そのため、ユーザーの声からヒットの秘訣を探ることができる。

「(SPや芸能人など)設定には夢があるけど、ストーリーや恋の駆け引きにはリアリティがあるんですよ。そこが楽しいんです。韓流ドラマやトレンディドラマにハマるのと同じです」(30代)

 コメントにもあるように、ゲームの舞台は戦国時代から吉祥寺、芸能界とさまざま。憧れの世界をかいま見ることができるので、ドラマを観ているのと近い感覚になるという。その一方で、ドラマや小説、マンガと違うのは「自分が主人公になれる」点。プレーヤーの選択内容で結末が変化する、マルチエンディング方式によって、より物語に入り込むことが可能になる。

 さらに

「面白いのは、女性にありがちな王道の心理選択をしても、必ずしもハッピーエンドに結びつくわけではないことだという。(中略)こういうところが、また女心をくすぐるのかもしれない」

 とのこと。たかがゲームと侮るなかれ、自分の恋愛力を試すこともできるのだ。

 極めつきは、ゲームを離れてもキャラクターとコミュニケーションが図れる機能。タイトルによっては、好感度の高いキャラからメールが送られてくることもある。バーチャルだけでは終わらせない、嬉しい仕掛けが女性たちを夢中にしているようだ。

女をバカにしたような恋愛コンテンツは作らない

 ボルテージ創業者の一人で時から副社長で、現副会長のを勤めていた、東奈々子氏。彼女には、女性向けコンテンツを作るにあたって“働く女性たちを癒やす場所を作りたい”という、強い思いがあったという。

「だからこそ、女をバカにしたような恋愛コンテンツは絶対に作りたくなかった。バーチャルに逃げるようなものではなく、リアルで、もっと言えば人生哲学まで入ったもの。“女って、どう生きるべきか”というところまで踏み込んだ、恋愛コンテンツを作りたかった」

 と、語っている。

 そこで作り手側が意識したのは、イケメンが何の脈絡もなく「好きだ」と言うだけのコンテンツではなく、女性たちが納得できる、意味のあるドラマを作ること。たとえば「キャラクターの髪の色は紫や青、オレンジはありえない。いっても金髪まで」など、細部にまで徹底したこだわりがあるという。王子様や芸能人との恋など、現実にはなかなか難しい設定の中に、キャラの髪色などの“リアル”を忍ばせる手法こそ、いわゆる“オタク女子”ではないOLや主婦に愛される理由のひとつなのかもしれない。

 今もなお進化し続けながら、恋愛コンテンツ部門において“向かうところ敵なし”なボルテージだが、創業時は赤字続き。同書には現会長津谷祐司氏と、その妻であり起業パートナーの東奈々子氏が経験した苦い思い出までもが赤裸々に綴られている。そのほか、社外秘のコンテンツ製作マニュアル「恋コン・バイブル」の詳細や、新入社員を即戦力にするためのノウハウも掲載。さまざまな観点からボルテージに切り込んだ解体新書となっている。

「胸キュン」で100億円』なんて、思わず二度見をしてしまうタイトルだが、起業家にとっても胸キュンの一冊になるはずだ。

文=不動明子(清談社)