SNSを使う上で大切にしたいことって? 「つながり」について改めて考えさせられる一冊

文芸・カルチャー

2015/9/13

 ここ20年で急成長を遂げたインターネットやSNSは、私たちの生活を大きく変えた。例えばTwitterで「赤羽でおススメの居酒屋はどこですか?」と聞くと、会ったことのない誰かが教えてくれることがある。

 私事で恐縮だが、筆者がWebライターになったきっかけも、趣味で公開していた読書ブログにお気に入りの本の感想をアップした所、作者の方からコメントが届いて、著書をプレゼントして頂いたのがきっかけだった。

 世代や職業問わず、気になった人とはSNS上で気軽に交流を持つことができ、進化し続けるネットの世界には、メリットがたくさんある。

 しかし、ネットやSNSが身近になると、人との交流が盛んになる反面、様々なトラブルが起こることも事実だ。

 藤野恵美の『雲をつかむ少女』(講談社)は、そんな現代人とインターネットの関係性について、深く考えさせられる1冊である。本書は小学生から老婦人まで、8名の人物が登場する連作短編集だ。

 第1話で登場するのは、スマートフォンの動画共有サイトで、シリアの内戦の動画を目にした中2の少女・結衣。小学生の時にいじめを受けた経験を持つ彼女は、暗い子だと思われないよう、SNSのメッセージにも、すぐに返信するなどして場の空気を読み、ふだんは友人が勧めるおもしろ動画を見て、楽しそうに振舞うことを心がけていた。しかし、一般の人々が次々に銃撃される内戦の動画を見たことをきっかけに、戦争について考えることがやめられなくなる。

 その動画を見ることを勧めたのは、第2話の主人公である、真面目なクラスメイトの楓(かえで)。広い世界に視野を向けようとする彼女は、SNSでも場の空気を読まず真面目な発言を繰り返し、周囲から浮いてしまう。

 物語では他にも、ヴァイオリンを弾く自分の動画をアップして、他人からの称賛を必死に求めてしまう女子校生や、ネットゲームのアプリで課金してプレイする友人に疑問を持つ小学生が登場する。また、自分の成長記録をブログで公開する母親に不満を持つ少女の話も描かれる。

 どの話も私たちの身近で起こっている問題ばかりだ。しかし今さら、ネットのない日常を送ることも現実的ではない。

 恐らくそのことを理解していた登場人物たちは、トラブルにあった時、ネットの世界から適切な距離を置いたり、また逆にSNSを上手く使って相手のことを気にかけたりして、賢明な解決方法を見つけていた。使い方さえ誤らなければ、インターネットは誰かが誰かの背中を押すきっかけにもなる、とても素敵なツールになりうる。

 ちなみに第7話では、舞台をアメリカに移し、高価で専門家にしか扱えなかったパソコンを世界中のどんな人でも使えるようにして、インターネットを広めるのに貢献したIT起業家の母親の話が描かれている。

 世界を変えたIT起業家は、年齢も国籍も性別も関係なく、皆がインターネットで繋がって、知識を共有できるようになることを望んでいた。今の時代は、ネットさえあれば、たいていの情報は手に入るし、外に出ず生活することだって可能になった。

 しかし、インターネットはあくまでも現実の延長戦であり、画面の向こうにはいつだって血の通った人間が存在することを忘れてはならない。そして、検索だけでは決してわからない景色や人のぬくもりが現実の世界にはちゃんと存在することも、覚えておいた方が良いかもしれない。

 進化を続けるインターネットとの向き合い方を改めて考えさせられる1冊だ。今の若者たちの様子もわかり、ネットとの距離感を考えるきっかけにもなるので、子どもだけではなく大人もぜひ読んでみてほしい。

文=さゆ