ネットで話題! マンガ『ママ友がこわい 子どもが同学年という小さな絶望』がリアルに怖かった 

マンガ

更新日:2018/3/26

 「ママカースト」なんて言葉がずいぶん前から定着するようになり、今年放送されたドラマ、『マザー・ゲーム~彼女たちの階級~』(TBS系)でもママ同士の確執が描かれ話題を読んだ。今では、「ママ友」という言葉にネガティブな印象を持つ人も多いのではないだろうか。

 ママ友関係と無縁な人からすると「たかがママ友ごときで悩むなんてバカバカしい」と思うかもしれない。だけど、本当にそうだろうか? 『ママ友がこわい 子どもが同学年という小さな絶望』(野原広子/KADOKAWA)には、避けられないママ友付き合いに疲弊していく母親の日常が描かれている。

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 学校や職場と関わりを持たない「母親」をとりまく環境はある意味特殊だ。作中では物語の主人公、サキが5歳の娘ミイとの毎日についてこう漏らす。

ミイができて仕事をやめて小さなミイと小さな世界で二人きり かわいくていとおしいミイと幸せなのに 幸せな孤独なセカイ 幸せなはずなのにどうして孤独だと思ってしまうんだろう

 そんなサキの気持ちに唯一共感してくれるのはミイと同じ保育園に通う、ののちゃんのママ、リエだった。気のおけない仲だったはずのふたりだが、そのうちママ友グループの中でもリーダー格であるリエが、サキを“仲間はずれ”にするようになる。ミイがののちゃん以外の子と遊ぶようになったから、ミイがののちゃんを差し置いてお遊戯会でセンターだったから、そんな些細なことがきっかけでサキはみるみる他のママからも陰口をたかれ、嫌がらせを受けるようになるのだ。「ママ友とかなんて小さい」と気を取り直そうとするも、「もしも子どもまでいじめられたらどうしよう」と思うと、主人公はママたちとの付き合いを完全には断ち切れない。

きっと私は間違えてしまったんだと思う あの人との距離感を 近く深く 子どもの仲良しは私の仲良しだと 仲良しでなければならないと 大きな勘違いをしてしまった

 ママの気持ちを理解してあげられるのは同じママだけ。それなのに、一番の理解者であるはずのママ友との関係はこじれ、子どもが同学年という枷があるためないがしろにもできない。本書を読み進めると「ママ友」たちの異質な結びつきが浮き彫りになる。

 だが、このマンガの肝はただ単に「ママ友って怖い」と、他人ごととして一括りにできないところだ。物語の終盤、「ママ友怖いママ友めんどくさい いやそれとも女が怖くて女がめんどくさいのか」と、自問するリエ。小さな世界のしがらみを断ち切れない閉塞感は、ママでなくとも共感できるのではないだろうか。

 最後には「ママ友なんて子どもが卒業するまでの辛抱」と前向きになる主人公。だが、小さな街だと中学校を卒業するまでママ友の子どもと自分の子どもが同級生、なんてこともある。さて、リエはサキとの関係を断ち切ることはできるのか。なんてことはない母親たちのぬるい日常が描かれているだけのはずなのに、ある意味怪談話よりもぞっとする結末がまっている。

文=松原麻依(清談社)

【連載】ママ友がこわい 子どもが同学年という小さな絶望 第1回