20代女性読者をターゲットに、リアルな性描写まで踏み込んだ扶桑社の電子書籍レーベル「ヒメゴト倶楽部」。同レーベルの新人作家発掘のために誕生した「リアルロマンス小説大賞」の選考に携わる杉田淳さんに「女による女のための愛と性の小説」についてお話を聞きました。
女のエロスには物語が必要
――まずは「リアルロマンス小説大賞」のコンセプトを教えてください。
杉田: 「ケータイやスマートフォンで読みたくなる、女性が描く女性のための愛と性の小説」です。ぶっちゃけた話、エロ小説なんですけど(笑)。コアターゲットは「25歳・独身・OL」の女性を想定しています。 advertisement
――作家は全員女性なんですよね?
杉田: 書き手は100%、女性作家です。下は26歳から上は50代までと年齢層は意外とバラバラですね。
――男性の担当編集者としては、女性向け官能小説の市場をどう見ていますか?
杉田: 僕も男なので男性向けの官能小説は今までに読んできましたが、女性が女性のために書いたものはやっぱり全然違うんですよ。男の場合はビジュアルに訴えかけるセックスシーンが盛り沢山あればOK、というのが基本。でも女性の場合は、まず物語が必要。それとビジュアルではない触覚や嗅覚、聴覚がエロスと強く結びついている気がしますね。
――女性読者にはどんなジャンルが人気なのでしょう?
杉田: まだ手探り状態ですが、今のところ女性が「受け身」の作品の売上が好調です。主人公の女の子が強引に何かされてしまう、とか。でも最近は「元気な女の子が可愛い男の子をやっちゃう」みたいな作品を書く20代の作家さんも現れてきているので、一概には言えませんが。
★官能小説一問一答★Q:電子書籍の官能小説が一日のうちで最も売れる時間帯は?
A:「13時過ぎ、それから25~27時の間と2つのピークがあります。おそらく前者が主婦層、後者がOLや学生でしょう」(杉田さん)Q:官能小説の電子書籍はどこで買えるの?
A:パブー、DMM.com、eBookJapan、電子書店パピレスなど多数の電子書籍サイトから購入できます。この他、フランス書院、光文社など出版社の公式サイトからもダウンロードは可能。
――「ヒメゴト倶楽部」は電子書籍専門のレーベルですが、紙の本で出される官能小説と比べると何か違いはありますか。
杉田: 例えば、牧村由利子さんという作家がいるのですが、彼女の書く文章はオリジナル性が高い。でも、もしかしたら紙の本だと、リスクが高いと直したくなる原稿かもしれません。僕は基本的には結構(原稿に)手を入れるタイプなのですが、彼女の作品はそのまま出して読者の反応を探ってみる。こういう実験的な試みがするっとできるのが電子書籍の長所ですね。
――従来の官能小説よりも軽いタッチが好まれるリアルロマンス小説は、ケータイ小説の延長線上にあるのかもしれませんね。
杉田: 確かに、絵文字入りのセリフが出てくるような軽いものは、若い女の子には受けがいいらしいんですよ。でも逆に、大人の女性が読むと耐えられないかもしれない(笑)。同じ女性でも20代と40代では官能小説に求めるものが全然違うんですよね。
――リアルロマンス小説大賞の創設から現在まで、ダウンロード数=売上に変化は見られましたか?
杉田: 着実に伸びてはきています。紙の本に比べるとまだまだ少ない市場ですが。でもなぜ今まで女性向けのこういう小説がなかったのかというと、単純にリアルな書店では買いづらかっただけだと思うんですよ。そこへ電子書籍というツールが登場したことで、女性の購入のハードルが下がり始めてきた。ですから今後このジャンルは確実にもっと成長していく、大きな鉱脈になると僕は見込んでいます。
<リアルロマンス小説大賞からデビューした注目作家たち>
★牧村由利子/『路地のえっちな喫茶店』『なんでも、しますから』 |
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「文体は独特ですが、女性にしか描けない官能を書ける作家です。今は3週間に一度のペースで書いてもらっています。電子書籍を初めて読む人にもお勧めですよ」(杉田さん) |
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★吉原杏/『蜜縄III<前編>~監禁されて』『蜜辱★面接スカウトの罠』 |
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「若い女性読者をターゲットにしたゲーム感覚のような小説が得意な作家。ケータイ向けの文章を作ろうというコンセプトから生まれた『蜜辱』シリーズは売上も好調です」(杉田さん) |
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★新崎もも/『濡れちゃう診察室~イケメン医大生に気絶するほどいじられて~』『囚われの花嫁~Sなダンナ様のオモチャになって~』 |
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リアルロマンス作家の中で、いちばん作品数が多い作家さんです。内容はハード路線で、読者の期待に応えていただいております。(杉田さん) |
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