男にLINEブロックされ…きつい、モテない26歳女子研修医の実態

コミックエッセイ

公開日:2015/9/18

 社会人になると、早出出勤、遅くまでの残業……、「あー、忙しい! なんで自分だけが……」という錯覚に陥ったことのある人も少なくないであろうこの現代社会。時々立ち止まりながらも、何とか自分の中で折り合いをつけて仕事と向き合っている人がほとんどではないだろうか?

 『まどか26歳、研修医やってます!』(水谷緑/KADOKAWA メディアファクトリー)は、実在する研修医「まどか先生」に取材を重ね、女子研修医の日常・プライベートをリアルに描きだしたコミックエッセイ。

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 医者といえば、何となく近寄りがたいイメージがあるが、彼女は我々が共感できるサバサバした気さくな女子研修医だ。仕事と恋愛のバランスが上手くとれなかったり、失敗したり落ち込んだり……。研修医も普通の女性と何ら変わらないことに気づかされる。

 とはいえ、研修医の仕事は非常にハード。6時〜22時(内科は8時〜15時)まで働き、急患が来ればいつどこにいても駆けつけて対応する。人の命に関わる仕事は、責任感を十二分に持たなくてはならない。また、通院して2週間で亡くなった患者さんに対応した場面では“あのときもっとこうしていれば……”と後悔の念が押し寄せ、涙したまどか先生。しかし、涙に浸る余韻もなく、ほかの患者さんが先生を待っている。

「降り積もった後悔に突き動かされて 次へ走るしか道がない 医者ってそういう仕事なのかもしれません」

 どんなミスや悲しみがあっても「その日」で立ち止まってはいけない、という想いは働く読者たちにも通ずるものがあるだろう。

 昼夜問わず働き、日にちの切れ目さえ曖昧な世界で生きるまどか先生は、ある日、合コンで一人の男性と連絡先を交換するも、緊急手術のため男性とのデートを4回ドタキャン。いつしか男性に見切りをつけられ、LINEをブロックされてしまう場面も。まどか先生と同じような忙しい毎日を過ごす女性から見ると、何とも切ない描写だ。

 まどか先生のように、働きすぎで大切な何かを見失ってしまった人は、野球好きな彼女が、手術を“バッターボックス”にたとえた言葉を読んでみてほしい。

「医者としていっぱい打席に立って 経験値を上げなきゃ」「とにかく1回でも2回でも多く手術をしたい」

 どの仕事に就いていても、新人ならば彼女のように、早く仕事を覚えなければという焦燥感があるだろう。そして、がむしゃらに働くことでさまざまな困難を乗り越えていく……その過程に共感する人も多いはずだ。

 ちなみに、本物の研修医に取材したからこそ描けるリアルな表現も読んでいて面白い。メスで人の肉を切る感覚は「鶏ももよりも堅く、にんじんよりは柔らかい。堅いマグロの皮くらい」。また、泌尿器外科で男性の「玉」取りの手術をした際は、ゆでたてのうずらの卵のようにツルツルとしてキレイで、しばし見とれてしまったのだとか(!)。

 その仕事を極めようと、いつまでも向上心を持って取り組む。そうしていくうちに、いつの間にかプライベートの幸せもついてくるのでは……そんな風に思わせてくれるコミックエッセイだ。

文=古賀サチ子(清談社)