今こそ「英雄」を目指せ! 脳科学をベースにしたまったく新しい人生開拓法

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更新日:2015/9/24

『英雄の書』(黒川伊保子/ポプラ社)である。本書は「男も女も英雄になれ」とひたすら発破をかけてくる。もちろん英雄といっても神話や小説の中の登場人物のことではない。これは現実の話だ。

 本書は大学卒業後に人工知能の開発に携わり、脳と言葉を研究した結果、語感の正体が「言葉の発音の身体感覚」であることを発見し「語感分析法」を開発した、感性分析の第一人者である黒川伊保子氏が、人生という冒険に旅立つ若者へ勇気を授け、英雄を目指せと説いている。実際、黒川氏には就職を控えたお子さんがいるそうで、母として時に厳しく、時に優しく語りかけるような文体となっている。そのため、言わんとすることがスッと頭の中に入ってくる。そして個人的な経験や直感で書かれた凡百の自己啓発書と違い、考え方が脳科学に基づいているため非常に汎用性が高い。とにかく誰でも、すぐに実践できるのだ。

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 しかしなぜ英雄なのか? 黒川氏によると、脳というのは7年ごとに感性の位相を変えるものであり、28年経つと真逆の位相となって、56年で元の位置に戻ってくるもので、夢を語り空気を読む若者の時代は2013年に終わっており、2020年までは使命感を持ち孤高の道をゆく英雄=ヒーローの時代に入っているそうだ。そして英雄になるためには、誰かの予想をはるかに超える「反射神経上の予想外」を生み出す発想が必要という。

 本書は、はじめに脳が進化するためには「失敗」が絶対に必要であることを説く。そして失敗の仕方も大事で、誰のせいにもしないこと、過去の失敗にくよくよしないこと、未来の失敗におどおどしないことが肝要であるという。そして子どものときから要領よく失敗から逃げていた人は脆弱であり、自分の人生をまるで他人ごとのように見ているという。さらに寝ている間に進化する脳のためには良い眠りが必要であり、夜11時を過ぎたら携帯電話の携帯端末の凝視をやめ、12時には床に入れとある。真夜中の不自然な光は頭を悪くし、スタイルも悪くし、モテない人を作り出すという。

 また他人に追従して暮らしていると、脳の感性が大衆全体の平均値に近くなってしまうため「反射神経上の予想外」を生み出すことができなくなるという。そうならないために、人と群れることを今すぐにやめ、人の思惑を気にしたり事の成り行き案じたりすることもキッパリやめねばならないという。そして今や生活になくてはならないものになりつつあるSNSは、大勢に流される脳を作り出して英雄脳を消し去る道具であり、よほど節度のある人でなければ人の思惑に絡め取られてしまう、と黒川氏は危惧している。英雄になるためには孤高の時間を持ち、左右の脳が連携&独立するエクササイズを行い、自分のことではなく他人思いになり、たまらなく好きなものを見つけることが大事だという。

 さらに自尊心と使命感を持ち、目指す正しさが必ずしも「崇高」にして「普遍」の正しさである必要はない。目指すのは「圧倒的に上質な異質」であり、それを人は無視出来ないという。本書ではスティーブ・ジョブズ、ココ・シャネル、アルベルト・アインシュタインといった人たちが紹介されている。

 誰かの真似をしても、それは真似でしかない。もちろん誰かの経験から学ぶことはできるが、学ぶ以上のことは自分で探さなくてはならない。誰かの生き方は誰かのもの、自分の生き方は自分で決めねばならないものだ。それには脳を進化させ「本物の自分」になれ、と黒川氏はいう。もちろんそれは簡単なことではない。しかし目指していかねばならないのだ。自分の意見を聞いてくれるところにしか行かず、仲の良いお友達だけに囲まれていると尊大になり、自分の能力を見誤ってしまう。そんな哀しい人にならないため、『英雄の書』を進むべき人生の羅針盤とし、優れた英雄を目指して欲しい。

文=成田全(ナリタタモツ)