ネコのダイエットには○肉が良い ―キャットドクターが語る「ネコの真実」が興味深い

暮らし

2015/9/27

 2015年8月、世界一の長寿のネコとして、米国オレゴン州に暮らす飼猫・コーデュロイ(26歳)がギネス認定された。人間に換算すると118歳(!!)のコーデュロイは、大きな病気もなく、穏やかに日々を過ごしているというから、飼い主さんは幸せだ。

 今でこそ、ネコの平均寿命は15年ほどだが、ほんの40年前の日本では約5年と言われていた。ペット医療の発達やペットフードの改善、室内飼いが増えたことなど、理由は様々だが、寿命が伸びた分、ネコと人間との関わりも長く深くなった。喜びが増えた反面で、トラブルも増えている。病気と治療・療養、野良ネコの殺処分問題、規制のないペットフードなど、日本は実は「ペット後進国」だという。

 そんなネコの問題をはじめ、生物学、獣医学、経済学など…様々な角度からネコのことを教えてくれるのは『ネコの真実』(南部美香/中日新聞社)だ。著者の南部氏は、20年以上にわたって臨床医としてネコと向き合ってきた。本書は「日本のネコは幸せなの?」をテーマに、ネコの専門家がネコのすべてを詰め込んだ「ネコがちゃんと長生きするための処方箋」である。

ネコの健康に関する2つの誤解と対処法

 生き物を飼うことにおいて、やはり重要視したいのは「健康」だ。内臓疾患やガンといった重病に関する詳細は本書を読んでいただくとして、ここではネコの健康に関する2つの誤解と対処法を紹介しよう。

(1)ネコが毛玉を吐いたら要チェック!

「ネコは毛玉を吐くものだ」と思っている人は少なくない。だが、南部氏は「健康なネコはほとんど毛玉を吐くことはない」という。「毛玉を吐くことが病気のサインであることが少なくない」ので、その原因を知ることが大切だ。

 早朝にネコの吐瀉物を見つけたり、ネコが「ケッケッ」という咳をした場合、喘息の可能性がある。発作が起きやすい早朝は胃の中も空で、咳と一緒に泡のようなモノを吐き出すという。ただ、喘息の発作の後でも食欲は普通にあるため、飼い主は喘息に気づきにくい。ウチのネコは……喘息持ちかもしれない。

 また、トイレの中や周辺で吐いた場合は、便秘や膀胱炎の可能性もある。トイレの状況と一緒に確認したい。寒さのストレスで胃腸炎を起こしている場合や膵炎、腎不全、薬との不適合、アレルギーなどもあるので、あまりにも吐く回数が多いときは、かかりつけの獣医さんに相談しよう。

(2)ネコは必要以上に食べることはない動物?

 昔は「ネコに肥満はない。なぜならネコは必要以上に食べることはない動物だから」と言われていたそうだ。だが、現在のネコの2~3割は肥満だという。肥満は重病へと繋がることもあるので、できるだけ早く健康体に戻してあげたい。

 だが、人間だってダイエットは難しいのに、いわんやネコである。そこで、南部氏はネコ本来の「肉食」に立ち返り、脂肪分の少ない「鶏肉ダイエット」を始めた。結果、殆どのネコがみるみる痩せたという。最初は脂肪が落ちて体重が減り、筋肉が付くと体重の変化はなくなるが、体がしっかりしてくるそうだ。ネコが太ってきたと感じたら、鶏肉ダイエットを試してみたい。

スコティッシュフォールドは繁殖させてはいけない?

 数十年前と違って、様々な品種のネコが簡単に手に入る今の世の中。ロシアンブルーやペルシャ、アメショーなど人気の品種は多々あるが、中でも特徴的なのがスコティッシュフォールドだ。折れ曲がった耳が可愛らしい、人気の品種だ。

 だが、南部氏はスコティッシュフォールドの繁殖には疑問を投げかける。耳が折れ曲がるというのは遺伝子の異常による「軟骨の形成不全」がもたらすもの。その形成不全は、同時に手足の関節や気管支にも起こる。気管支は正常よりも細く形成されることが多く、空気が取り込みにくくなる。手足の関節には軟骨が過形成され、時を経て固くなっていく(骨化)。関節は大きく膨らみ曲がらなくなり、痛みを伴うために歩くのが困難になるという。

 スコティッシュフォールドを繁殖させることは、遺伝子的な欠陥を持つネコを生み続けることなのだ。カワイイから、売れるからと、ネコの苦しみを無視していいのだろうか?

日本のキャットフード問題

 欧米では「ペットフードは家畜飼料」であるとされ、やがては人間の口に入るものであるという認識なのに対し、日本では「雑貨」と位置づけられている。それ故に、法的規制が甘く、製品の安全性が問題になる事件がたびたび起きている。

 また「良く食べる」ことを売りにするために、ペットフードには様々な嗜好性が盛り込まれ、その結果、ネコは「満腹なのに食べてしまう」ようになった。すると今度は「たくさん食べても太らない」ように、繊維の含有量を増やした商品が開発される。

 だが、消化できずに排泄するために尿の量も減り、ネコが結石になりやすくなってしまったという。さらには、原材料費を抑えるため「炭水化物」の使用量が増え、それが糖尿病や膵炎の原因にもなっているという。ネコが人間と暮らし始めて9500年。キャットフードのあり方を見直す必要があると、南部氏はいう。

 本書には、他にも数多く、ネコの臨床医ならではの視点と考察・分析が記されており、どの項目も5分ほどで読めるので、ネコが膝に載ってしまって動けなくなったときに、そっと開き、ネコの気持ちを考えてあげるおともに、おすすめしたい。

 ネコが幸せなのかどうかは、正直、わからない。だが、ネコを幸せにしてあげたいという、飼い主の人間の気持ちは、きっとネコに伝わる。私の膝の上では今、黒ネコがゴロゴロとノドを鳴らしている。幸せに見えるのは、気のせいじゃない、と思いたい。

文=水陶マコト