“書店ゼロ市町村”が全国に332も! 理由はオリジナリティの喪失?

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/17

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 電子書籍やインターネット書店など、本の購入に“足”を必要としなくなって久しい。便利になった一方、街から次々と書店が姿を消している。驚くことに全国には、地域に書店がない“書店ゼロ”の市町村が332(5月1日調べ。日本書籍出版協会資料より)もあるという。この事実に対して、全国の読書家からは嘆きの声と共に、書店の独自性を理由に「致し方なし」とする声が多いようだ。

 2015年9月1日(木)、東京都内に3店舗を展開する書泉が、“書店のメッカ”千代田区神田神保町にある老舗書店・書泉ブックマートを、9月30日(水)をもって閉店すると発表した。1967年に開店した同店は、近年では2階を「少女コミック・同人誌・ティーンズラブ(TL)をメインにした少女向けフロア」に、3階を「ボーイズラブ(BL)・女性向小説をメインにした大人女子向けのフロア」にし、人気を博していた。広報担当者は「近くに書泉グランデがあり、経営を合理化するため」と閉店理由を明かしてはいるものの、多くのサブカルチャー好きの女性を悲しませた。

 また8月には、2006年7月に開店し、古書店兼ギャラリーとして運営してきた、日本橋茅場町の森岡書店が10年の歴史に幕を下ろしている。多くの書籍を揃える従来の古書店とは異なり、厳選した古書のみを取り扱った同店の閉店には、やはり多くの読書家が別れを惜しんだ。今後は、5月に銀座一丁目に開店した“一冊の本を売る書店”という新しいスタイルの森岡書店銀座店に力を注ぐという。

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 都内の人気書店すら閉店を迎える昨今。地方の自治体では、都内を遥かに凌ぐスピードで書店が姿を消している。すでに北海道では47、長野県では35、福島県では22の自治体が“書店ゼロ”となっている。この発表を受け、世間の読書家からは「昔は個人店から中規模な店まで、たくさんあったのにな」「本屋巡りができた時代は幸せだった」「ふらっと入って、読んだことのないジャンルに出会うのが素敵なのに…」といった悲しみの声が上がっている。

 しかし一方で、「本屋に行っても、欲しい本がないことが多いし仕方ない」「結局は書店もアマゾンの売れ筋置いてるだけ」といった、各書店にオリジナリティが失われているという声や、「コンビニでいいよ」「大型ショッピングモール行けば、書店くらいあるしな」と、街の書店が減ってもなんとかなるという声も見られる。また、「図書館に行けばいい」「書店ゼロでも図書館はあるだろ」という声も。

 『ビブリア古書堂の事件手帖』や『書店ガール』など、書店をモチーフにした小説がドラマ化され、盛り上がっているようにも思える書店業界。それを証明するかのように、梶井基次郎の小説『檸檬』に登場する京都丸善が、カフェを併設した超大型書店・丸善京都本店として10年ぶりに復活したり、東京都下北沢にある“これからの街の本屋”をコンセプトにしたB&Bは、トークイベントなどさまざまなイベントで人気を集めたりと、嬉しいニュースも多い。

 ネットで簡単に本を入手できるようになった今だからこそ、書店ごとの個性や、対人だからこそ可能なサービスが求められているのかもしれない。個性の光る書店が増えることで、“書店ゼロ”の地域が増えるのではなく、今後減っていくことを期待したい。

書店

■『ビブリア古書堂の事件手帖
著:三上延
価格:616円(税込)
発売日:2014年12月25日
出版社:KADOKAWA

書店

■『書店ガール
著:碧野圭
価格:713円(税込)
発売日:2015年5月11日(月)
出版社:PHP研究所