昭和のアイスは懐メロと同じ感覚で楽しめる!―『日本懐かしアイス大全』アイスマン福留さんインタビュー

食・料理

公開日:2015/10/2

懐メロと同じ感覚で、懐かしアイスを楽しんでほしい

――僕はもう少し下の世代(30代前半)なんですが、この本を読んで『レディーボーデン』(現在ロッテが販売)を久しぶりに思い出しました。小さいころは、高級アイスといえば『ハーゲンダッツ』じゃなくてこのアイスで、親とスーパーに買物に行ったときに、憧れのアイスとして見ていた記憶があります。

福留 ハーゲンダッツの日本法人が立ち上げられたのは1984年ですが、ハーゲンダッツのブランドが浸透するまで、高級アイスといえば、『レディーボーデン』でしたからね。『レディーボーデン』はもともと明治乳業がライセンス契約をしていましたが、後に米国のボーデン社が日本法人を立ち上げて独自に販売を開始。現在はロッテがライセンス契約をしていて……と複雑な歴史があります。そのせいもあってか、取り上げられる機会の少ないアイスですが、高級アイスの歴史はこいつ抜きでは語れません!


1971年に日本で発売された『レディーボーデン』。その発売をきっかけに、日本では各社が高級アイスクリームを発売する”高級アイスクリーム戦争”が勃発したそうだが、レディーボーデンは圧倒的な人気で王座に君臨し続けた

advertisement

――また『ホームランバー』(協同乳業)の初代のパッケージデザインが和田誠さんのものだったとか、『ジャイアントコーン』がもともとは『グリココーン』『ジャイアンツコーン』という名前だった……という話なども、本書を読むまで知りませんでした。

福留 『ガツン、とみかん』(赤城乳業)がもともとは『みかんチョ』という名前だったという話や、ガリガリ君のイラストは2000年までは社員が描いていて雰囲気がかなり違った……という話なども、知らない方が多いかもしれませんね。『ジャイアントコーン』も、以前はバータイプやカップタイプを発売していた時期もあり、生き残ったコーンタイプがシリーズ化されたものだったんですよ。


コーンタイプアイスの代名詞的存在『ジャイアントコーン』を紹介した『日本懐かしアイス大全』のページの一部。1963年の発売当初は『グリココーン』という名前だった

――しかし、何百種類ものアイスが紹介された本書を読んで、「よくもこれだけの数のパッケージを集めたな……」と驚いてしまったんですが、かなり大変だったんじゃないですか?

福留 最初に作ったアイスのリストは1000種類を超えていて、これでも数を絞ったんですよ。僕の手元にパッケージがなく、メーカーさんも画像データを持っていないアイスもあって、Twitterで「このアイスの画像、持っている方いませんか?」と募集したり、オークションを利用したりもしました。また、巻末にインタビューも掲載している国内NO.1のアイス充填機メーカーの愛産製作所さんをはじめ、多くの方にご協力いただき、昔のアイスの画像、パッケージ、グッズなど貴重なアイテムをお借りすることができました。

――販売元のメーカーですら持っていないものがあったんですね。

福留 メーカーさんに問い合わせをして、「そのアイス、本当にウチから出た商品なんですか?」と逆に聞かれたこともありましたね(笑)。今回の本では、アイスクリーム流通新聞社・代表の近藤忠顕さんから昭和40年以降の同紙の記事をお借りして、発売情報なども細かく調べたので、データはかなり正確だと思います。

――それだけの資料が揃っていれば、さらに先の時代のアイスでも本が作れそうですね!

福留 平成時代のアイスでもぜひ作りたいですね。今回は昭和のアイスに焦点を絞った本なので、特に40~50代の人には懐メロと同じような感覚で楽しんでもらえると思います。飲み屋に持って行って、ぜひ話のネタにしてください。『宝石箱』や『キャデリーヌ』(グリコ)の思い出話をするだけで、かなり盛り上がれると思いますよ!

取材・文=古澤誠一郎 写真提供=アイスマン福留


アイスマン福留さん
1973年、東京都足立区生まれ。高校卒業後、トラックドライバーやIT企業代表などを経て、現在はアイス評論家をメインに活動中。アイス評論家として『マツコの知らない世界』(TBS系)、『お願い! ランキング』(テレビ朝日系)などメディア出演も多数。2014年には『一般社団法人 日本アイスマニア協会』を設立し、代表理事に就任。ご当地アイスイベント『あいぱく』などを主宰している。