神聖かまってちゃんも絶賛!ホラーマンガの鬼才・呪みちるインタビュー | 夏のホラー部第8回

更新日:2015/10/5

 美しい絵柄で、ショッキングかつ残酷な物語を描くホラーマンガの鬼才・呪(のろい)みちるさん。その初期作品をまとめた『火星高校の夜 呪みちる初期傑作選Ⅱ』(トラッシュ・アップ)が9月24日に発売された。バンド・神聖かまってちゃんのの子がファンであることを公言するなど、メディアでの注目度もますます高まっている呪ワールド。その知られざる足跡を辿ったインタビュー!

――まずはホラーとの出会いを教えてください。
:子供の頃、近所にすごくホラーが好きなお兄さんが住んでたんです。ぼくよりちょっと年上で、当時小学3年生くらいだったのかな。その人がどこかに旅行に行ったついでに、怖い話を仕入れてきたっていうんですよ。それが「耳なし芳一」の怪談で、子供心にものすごく怖かったんですね。それまでは『ゲゲゲの鬼太郎』を読んでも、『少年マガジン』のグラビアを見ても、怖いと感じたことはなかったんですが、「耳なし芳一」を聞いて以来、得体の知れないものが家に来るんじゃないか、という恐怖心を抱くようになりました。

――そのお兄さんがホラーの扉を開けてくれたんですね。
:その人はホラーマンガもいっぱい集めていて、しかも今にして思うとかなり渋いセレクションだったんですよ。楳図かずお先生などのメジャー系もありましたけど、どっちかといとカルトでマイナー寄りのマンガが多くて。ムロタニツネ象の『地獄くん』とか、白川まり奈の『侵略円盤キノコンガ』とか(笑)。ぼくのホラーの原点といえば、あの近所のお兄さんですね。

――では、そこから一気にホラーファンの道に?
:いえ、興味はあるけど怖がりだったんですよ。テレビの心霊番組なんて、怖くて絶対見られなかった。当時は円谷プロの『怪奇大作戦』を再放送でやっていて、友達がみんな見たがるんです。ぼくだけ怖いので「用事があるから帰る」と言い訳して先に帰っていました。『怪奇大作戦』のオープニング曲は、いまだにトラウマです。

――「怖い」が「好き」に変わったきっかけは?
:中学の頃だったかな、3つ年下の弟が日野日出志先生の『蔵六の奇病』を買ってきたんですよ。あのマンガって、表紙からして怖いじゃないですか(笑)。ぼくは絶対に手を出さないでおこうと思っていたのに、弟があっさり家に持ち込んで、しかも「怖いからもういらない」ってこっちによこすんです。で、おそるおそる読んでみたら、これが面白い。表題作はもちろん、その後に入っていた「水の中」という短編にも感動しました。

――どちらもホラーマンガ史に残る傑作ですね。
:グロテスクなのに、短編として非常に完成度が高くて、これはすごいものを読んでしまったぞと。それから弟が買ってくる日野先生の作品を続けて読むようになり、すっかりホラーマンガの虜になったんです。他のジャンルも読んでいましたが、ホラーマンガは特に吸引力が強いというか、心を持っていかれるんですよね。読んでいる間どこかにトリップできる。こんな作品を自分でも作ってみたいな、とその頃から思うようになりました。

呪みちる

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