今度の事件は、前代未聞の誘拐ビジネス! ミステリー好き待望『犯人に告ぐ』の続編が登場!

マンガ

更新日:2015/10/9

 人間は、自らの「正義」を全うするためならば、他を欺くことさえも厭わない生き物だ。嘘も方便。なにも人を騙すのは、犯罪者の専売特許ではない。犯罪者が警察を欺くのと同様、時には被害者だって警察を欺くことがある。犯罪者、被害者、警察…。三者入り乱れての「騙し合い」の攻防戦を描いた作品が、いま、大きな話題を呼んでいる。

 その作品とは、『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』(双葉社)。『クローズド・ノート』などの著作で知られる雫井脩介氏の最新作であり、タイトルの通り、2004年に単行本文庫合わせて135万部突破の大ヒットを飛ばした『犯人に告ぐ』の続編だ。しかし、続編とはいっても、前作の内容を忘れていても、まだ読んでいなくても、すぐにストーリーに入り込めてしまう。この本を読む者は、スリルあふれる展開の数々に思わず惹き込まれていくことだろう。

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 今回、物語の中心となるのは、“誘拐ビジネス”と銘打たれた前代未聞の誘拐事件。菓子メーカーの社長・水岡勝俊と小学生の息子が拉致監禁されたこの誘拐事件では、電話による身代金請求がないまま、社長のみが先に解放されるに至った。どうやら社長は監禁されていた際に、既に犯人グループから身代金受け渡しの方法について指示されているようだ。神奈川県警本部特別捜査官の巻島史彦警視は、解放された社長と協力して捜査態勢を敷くことになるが、社長は息子を救いたいという思いから、犯人との取引の詳細で警察に隠していることがあるらしい。警察を頼るべきか、犯人との約束を優先するべきか、どうすれば息子を救うことができるかと考え、揺れ動く社長。何か隠していると気づきながらもなかなか真実に辿り着けずに苦戦する警察。真の計画を秘密裏に進める犯人グループ…。巻島は真実に辿り着くことができるのか。いかに被害者の行動を読み解くか、犯人の裏をかけるかがこの事件解決のカギを握るのだろう。

 このストーリーは、捜査側と犯人側との双方から交互に事件の進行が語られる。特に、犯人グループのトップ・淡野の存在には、頭脳の明晰さ、その冷徹さに寒気すら感じることだろう。淡野率いるこの犯人グループは、振り込め詐欺にも関わっているらしい。彼らの詐欺ビジネスの実態は、あまりにも合理的でリアリティがある。

 しかし、読み進めるうちに、犯人グループに肩入れしたくなってしまうのは、なぜだろうか。「この犯人には感情がある。暗い恨みではあっても、そこには温度がある。ひたすら金の匂いをかぎつけているだけの冷血動物ではない」。それに気づいた時、巻島はどう立ち向かうのだろう。「お前もすぐに捕まえてやる。お前はそれまで震えて眠れ」。巻島は、犯罪に犯罪を重ねる犯人グループを逮捕することができるのだろうか。

 クライマックスまで一瞬たりとも、目が離せない。ページをめくるのさえもどかしく感じる程、次の展開が気になってしまうこんなミステリーは久しぶりだ。この本はミステリー好き必読。前作の衝撃を超える展開に痺れること間違いない。

文=アサトーミナミ