ナイーブな少年から、頼れる青年へ! 主人公・桐山零に注目!『3月のライオン』11巻!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/18

 昨年11月に10巻が発売されてから、待つこと10ヵ月……。待望の『3月のライオン』(羽海野チカ/白泉社)11巻が発売した! 待ってました。心待ちにしてました。コミックス派としては、 続きが気になってしょうがなかったのです。

 次女・ひなたの学校のいじめ問題がなんとか決着し、安堵したのも束の間。今度は川本家の「父」の登場によって、再び日常がかき乱されていった……というところまでが前巻のあらすじ。

advertisement

 読んでいる方々にはわかると思うけど、この父親っていうのが本当にどうしようもないオッサンなのだ。家族を捨てて新しい恋人の元へ行き、飽きたらまた新しい恋人のへ、を繰り返す。どっか遠くへ行ってしまえばいいのに、川本三姉妹の前へ現れては、めちゃくちゃに傷つけていくという……。読んでても辛くなるシーンが多かった。

 しかし! 11巻ではこれらのモヤモヤがそのままというわけではないその要因となったのは、やはり主人公の桐山の力だった。何を隠そう、この巻は、かなりの“桐山無双”になっている。

作者いわく、この『3月のライオン』という作品は、主人公の桐山が「一冊進むごとに“できる事”が少しずつ増えて大人になってゆく様子」を描いているのだという。それが如実に現れたのが、この11巻だった。これまでの桐山は、人との距離感を気にしすぎるあまり、誰に対しても踏み込めずにいた。しかし、川本家との交流や、強者の棋士たちとの対戦を経て、覚醒。“川本家父親騒動”が彼を一気に「頼りがいのある男」へと変貌させた。

作中、桐山が、父親と対峙する場面があるが、そこでも見事に返り討ちにしてくれた。そのとき筆者は思った。「あれ…? 桐山クンて、こんなカッコ良かったっけ…?」と。ひなたとの恋も始まり(今のところ一方通行だけど)、人間味が増した桐山が、格好良く見えて仕方ない。それどころか、生真面目で、性格穏やかで、将来有望、そして、初っ端からプロポーズしてくれるロマンチスト。またとない優良物件ではないだろうか?

正直、これまで桐山に大きな変化というのがあまり見られず、「このまま同じペースで進んでいくのかな~」という気持ちもあった。そんな気持ちを反省したい。『3月のライオン』は、桐山覚醒によって、ここからにさらに面白くなっていくに違いない。

文=中村未来(清談社)