ビール120円、激安居酒屋の儲かる仕組みとは?

ビジネス

更新日:2016/1/13

『なぜ、あの店は生ビールが120円でも儲かるのか?』(鬼頭誠司/ダイヤモンド社)
『なぜ、あの店は生ビールが120円でも儲かるのか?』(鬼頭誠司/ダイヤモンド社)

 時々、見かけるビール120円程度の激安居酒屋。

 120円といえばペットボトルでお茶やジュースを買うのと変わらない。居酒屋で一番注文数の多いであろうビールを120円で売るなんて、どうやって利益を上げているのだろうと不思議に思う。単純に他の飲み物やつまみで利益を上げているのではと思うが、ビールの安い店は他のメニューも安いことが多く更に疑問は深まっていく。

 経営コンサルタントとして多くの居酒屋に関わったことのある著者が記した『なぜ、あの店は生ビールが120円でも儲かるのか?』(鬼頭誠司/ダイヤモンド社)は、居酒屋経営の仕組みを小説形式で学ぶことができるビジネス本だ。本書からビール激安のカラクリを探ってみよう。

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 簡単にあらすじを説明しよう。主人公は、まもなく1000店舗に迫ろうとする外食チェーン経営者の父 昌一郎を持つ、大学生 あすみ。あすみは子どものころから父の背中を見て育ち、飲食店の経営に興味を抱いていた。当然、将来は父の跡を継ぐつもりだ。しかし、経営者の娘といえ簡単に跡取りにはなれない。そこで昌一郎は入社試験として、昌一郎の知人が経営する営業不振の飲食店の経営を立て直すことを提案した。

 あすみは酒屋の娘 はるかと一緒にさまざまなお店にアルバイトとして入り、経営の裏側を勉強、居酒屋の再建&昌一郎の会社への入社を目指す。

 ビール120円のカラクリは、あすみとはるかが店を立て直す際、リサーチとして入った居酒屋のシーンで明らかになる。

 120円のビールを見て「生ビール自体は赤字だよね?」と言う、はるか。

 そのセリフ通り、ビール自体は赤字だ。しかし、サワーやハイボールも120円だが、こちらは赤字にはならない。最初から最後までビールだけ飲む人は少ないので、その分、他の飲み物でビールの赤字を補っている。その他、飲み物以外の料理は全体的に少し高めに設定してありその分でも補う。

 ここまでは想像の範囲内だ。しかし、理由はこれだけではない。

 スマホをとり出したあすみは「このお店、全然広告が出てないの。たぶん販促費かけていないよ」と言う。このお店は生ビール120円というだけで口コミ集客などの販促に繋がっている。そのため、ネット広告、フリーペーパー、ポイントカードなどお金を払っての販促が必要ない。

 また、この店は、元々、他の店が入っていた雑居ビルの一室を内装だけ残して借りる“居抜き”を行っていた。居抜きの場合は、内装を好きなようにすることができないデメリットはあるものの、最初の建築コストを安くすることができる。

 120円で生ビールを提供するために、販促活動を行っていないことや、居抜きをしていることなど素人には見えにくい部分を削っていることがわかる。どれぐらいの利益がでるかなどの更に詳しい計算方法が気になる方は、ぜひ本書をチェックしてみてほしい。

 飲食店の仕組みを小説形式で教えてくれる本書。普段、何気なく通っている居酒屋の裏側がわかり、居酒屋の風景も違ったものに見えてくる。

 おいしいものを飲み食べ居酒屋へ行くだけではなく、知識欲も満たしたいという人にはオススメの一冊だ。

文=舟崎泉美