意識の低い人見知りが、人見知り解消メソッドを読んでみた結果

人間関係

2015/10/9

『初対面でもアッという間に話が弾むメソッド』(松本幸夫/ぱる出版)
『初対面でもアッという間に話が弾むメソッド』(松本幸夫/ぱる出版)

 「人見知りがウソのように解消するすごい法」との謳い文句で売り出されている本を発見した。『初対面でもアッという間に話が弾むメソッド』(松本幸夫/ぱる出版)である。帯には「20万人を指導してきたスピーチドクターの会話が楽しくなる33のコツ」とある。最初に手にしたときの直感で抱いた感想は、「うさんくさい……」であった(失礼)。著者は長年、人見知りで、克服しようと本を読んだりあらゆる手法を試したり、を繰り返してきたらしい。ずいぶん熱心な人見知りである。筆者は自らを人見知りだと思っているが、実は克服しよう、と奮起したことは今までに一度もない。意識の低い人見知りなのだ。同じ人見知りを自認する者で、どうしてこうも差があるのだろうか。

 読み進めていくと、著者の松本氏は、他者に自分のことを受け入れてもらえないことに恐怖を抱き、その結果、緊張してうまく喋れなくなる、というタイプの人見知りだということが分かる。

・自分は話下手だから
・自分の話なんか面白くない
・盛り上がるわけがない
・緊張してしまうからムリ
・どうせ何をやっても無駄

といったセルフイメージをNGとし、

・自分は堂々と話せる
・自分の話は面白い
・必ず盛り上がる
・緊張は適度にしていい話ができる
・やるほどに上達していく

と思いこんで心のブレーキを外せ、と説いている。

 その上で、「自分の失敗を話す」、「10秒だけください、と話を聞いてもらう」、「共通点を探す(What)のではなく、価値観を探る(Why)」といったテクニックを紹介している。共通点を探す質問をすると、例えば、足のサイズが大きい2人がそのことを話題にした場合「何センチですか?」「28です」「同じです」「そうですか」で終わってしまうが、価値観を探る質問の場合、「趣味は何ですか? なぜ好きなのですか?」とより深い部分まで掘り下げることができ、盛り上がりやすいのだという。

 ところで、そもそも論だが、本書の著者は本当に人見知りなのだろうか……? 私は、人見知りは根本に“他者に対する強すぎる警戒心”があると思っていたため、著者の松本氏の言う「人見知り」には少々違和感があった。おそらく著者の松本氏は昔から、口下手ではあるが、他者への警戒心はない。本書の中に、人と話す際に自分が緊張してしまう記述はあれど、前提として誰が相手であっても「話してみたい」という気概はあり、他人に対して警戒心を抱いているような記述は見受けられないからだ。

 もしかしたら、人見知りにも段階があるのかもしれない。より濃度の濃い人見知りは、他者への強い警戒心がまず最初に働く。「この見知らぬ人は危険な人じゃないだろうか、面倒くさい人じゃないだろうか」、となって心を閉ざすのだ。この場合、本書に記載されているような喋りのテクニックを身につけたところで、そもそも最初の「見知らぬ他人と話す」という段階にいけない。おそらく、それを超えた段階にいるのが、松本氏のタイプの人見知りであろう。そこには、「この人は打ち解けても大丈夫な人なのだろうか……」という警戒の壁はなく、「自分がうまく喋れるかどうか」という不安の壁がある。

 他人へ警戒心を抱くタイプの人見知りが、人見知りを克服したい、と思って本書を開くと、違和感を覚えるはず。この本は、本当はたくさんの人と仲良くなりたいと思っているのにうまく喋れない、という人のための本である。

 たくさんの人と仲良くなれたほうが良いことは分かっていながら、たくさんの人の中には面倒な人も含まれているんだろうなぁ……、そう思い警戒しながら、筆者は今日も粛々と人見知りでい続けようと思う。

文=朝井麻由美