お手本は2歳児! 乗り気でない相手を「もっと話してもいいかな」という気にさせる質問術

恋愛・結婚

公開日:2015/10/11

『米陸軍諜報指導官に質問されたら あなたは何も隠せない』(ジェームズ・O・パイル/三五館)
『米陸軍諜報指導官に質問されたら あなたは何も隠せない』(ジェームズ・O・パイル/三五館)

 好きな人のことを知りたい。ならば、本人に尋ねるのが一番。中には、「詮索と思われやしないか」「不快にさせるのでは」と考える人がいるかもしれない。だが、質問とはそもそも相手への関心を示す手段であり、人間関係を求める握手のようなもの。そのテクニックを身につければ、見違えるほど質問上手になれる。

 そう説くのは、『米陸軍諜報指導官に質問されたら あなたは何も隠せない』(ジェームズ・O・パイル/三五館)の著者ジェームズ・O・パイル氏。同氏は、米陸軍の諜報部員や海軍の特殊部隊シールズ(SEALs)に質問技術を指導してきたスペシャリスト。さぞかし強面で脅しつける技術が満載なのだろうと想像してしまうが、実はその基本はというと正反対だ。

 同氏が説く質問術とは、あまり乗り気でない相手を「もっと話してもいいかな」という気にさせる技術。つまり意中の相手に使うにうってつけなのだ。いわく、ビジネスから育児まで幅広く活用できるという。

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 そこで、実習の内容やアプローチなどが明かされている本書から、中でも基礎になる部分や恋愛に役立ちそうなテクニックをいくつか紹介してみたい。

すべての基礎となる「2歳児の好奇心」

 幼い子どもは言葉を覚えた途端、「なに?」「なぜ?」を連発する。つまり、人はだれでも生まれながらに質問の名手なのだそう。同氏が、尋問担当者のクラスでも最初に教えることは、“知らないから尋ねる”という気持ちに立ち返ること。そのため、サンタクロース問答という実習が最初に行われる。

 サンタクロース問答とは、サンタクロースの絵を見せて、生徒に質問をさせること。このトレーニングで、質問者はサンタクロースのことを知らない幼い子どもという設定で行う。

「これ、だれ?」
「サンタクロースだ。君の家に来てくれるよ」
「なぜ、うちに来るの?」
「お届け物があるから」
「お届け物って何?」
「オモチャさ。だけど、特別な夜にしか来ないんだ」
「いつ?」
「クリスマスイブだよ。君の家だけでなく、世界中の子どもの家に行くんだ。しかも、たった一晩で!」
「どうやって、そんなことできるの?」

 ここには、同氏が教示する質問術の基本が詰まっているのだ。まず、情報を収集する質問には、「だれ」「なぜ」「何」「いつ」「どうやって」の疑問符を使うことが大前提。相手は「はい」「いいえ」で返すのではなく、具体的に応えなければならないからだ。

 また、一つの質問につき、尋ねることは一つにすること。そうすることで、質問の焦点がぼやけることなく、知りたい情報が適切に得られる。

 質問は発見であり、先入観なしの関心ということも忘れてはいけない。そして無知は認めること。知ったかぶりは、知り得たはずの情報を逃してしまうかもしれないからだ。サンタクロース問答は、そうしたポイントをもすべて網羅している。

 その他、本書で徹底されていることがある。知りたい情報を掘り下げるためには、「他には?」で全容を抑えるというテクニックだ。例えば、趣味を尋ねた場合も一つとは限らない。いろんな趣味があれば、まずはそれらを聞き出してから、趣味について詳しく尋ねること。というのも、先に一つめの趣味を聞いただけで掘り下げると、他に趣味があったとしても、聞くタイミングを逸してしまうからだ。

相手に質問すること以上に聴くこと

 質問すること(話すこと)以上に力を入れるのが、聴くこと。人間に口は一つなのに、耳が二つある理由は、自分が話す倍は熱心に聴かないといけないからとも言われる。聴くことは話すことの倍、積極的でないといけないのだ。

 実際まず、相手が質問に答えているうちは、次の質問の準備はしてはいけない。たとえ自分では完璧と思える質問のリストがあったとしても、相手があってのこと。相手の様子や話しぶりをよく注意して聴くことで、次に何が適切な質問をすればいいかがわかる。

 また、一生懸命に聴いているという姿勢が相手に伝わることで、相手が話す気分にもなりやすい 。「聴くときは相手と向き合い、相手の顔を見る」。ただ、アイ・コンタクトやジェスチャーは国によって異なるものなので、ここは相手が日本人ならばややマイルドにアレンジした方がいいかも。外国人のするように真正面からじっと見ると逆に不自然になりかねない気がする。あとは、和やかな雰囲気をつくり、お互いを隔てるものはなく、手はぎゅっと握ったりせず、ゆったり広げるといいそう。

 言うまでもないけれど、質問上手になったからといって、恋愛上手になるとは限らない。まずは相手を知るのに役立てたいところ。ちなみに、同書には相手の不都合なウソを見破る質問術も書かれている。ただ、例えば二人の関係に危機が訪れたとき、このテクニックを使って真実を聞き出すのは吉と出るか凶と出るのか、悩まされるところではあるけれども…。

文=松山ようこ