「ノンフィクションが文学賞は凄すぎる!」ベラルーシの女性作家、ノーベル文学賞受賞に称賛の嵐! 一方、ハルキストたちは…

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/18


 2015年のノーベル文学賞。英国など複数の大手ブックメーカーで2番人気となり、「今年こそ村上春樹くるだろ」と、国内だけでなく世界中の期待が集まっていたが、選ばれたのはベラルーシの女性作家である、スベトラーナ・アレクシェービッチとなった。

 村上が受賞を逃したことで落胆するかと思いきや、「これで毎年恒例の楽しみが続く」とコメントするハルキストたちが多いようなので、今回は受賞したアレクシェービッチについての反応を見ていこう。

 ベラルーシの首都ミンスクの大学を卒業後、新聞社での下積みを経て、ジャーナリストとして活躍してきたアレクシェービッチ。代表作は第二次世界大戦時、ソ連の従軍女性たちのありのままを取材した『戦争は女の顔をしていない』。この作品は当初出版が禁じられ、ソ連当局からも非難を浴びることとなる。
その他にも、第二次世界大戦時の子供たちの小さな記憶を集めた『ボタン穴から見た戦争 -白ロシアの子供たちの証言』や、チェルノブイリ原発事故の被害を追った『チェルノブイリの祈り』など。どの作品も、悲劇に巻き込まれた一般市民の生活を詳細に書き記した、現実史に潜む”悪魔の顔”が浮き彫りになるものばかりである。ソ連独裁政権の言論統制から逃れ、ヨーロッパを転々としたこともあるなど、彼女自身が、反体制派という非難と圧力に抗い続けてきたという歴史を持つ。

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 また、アレクシェービッチの作品には分かりやすいストーリーは存在せず、独特の手記のような形で記された人々の凄惨な記憶の断片は、まるで映像のように克明に、読み手の脳裏にその光景を映し出す。

 今回、アレクシェービッチにノーベル賞が与えられた理由は、「我々の時代における苦しみと、勇気の記念碑と言える多声的な叙述に対し」とのこと。ジャーナリストとして、社会主義体制に抑圧された人々の声を通し、旧ソビエトの実態を描いてきた同氏の受賞に、日本からも多くの称賛の声が上がっている。

 ジャーナリストのノーベル文学賞受賞は、アレクシェービッチが初と言われており、世間からは「ノンフィクションでの文学賞は凄すぎる!」「ジャーナリストがノーベル文学賞受賞って珍しいような… 是非、読んでみたい」と、興味を持つ声が多く上がった。また、「これは多くのジャーナリストに希望を与えたかもしれません」「真実を伝えることが認められたのは、たいへん嬉しい」など、ジャーナリストの可能性を広げた功績を称える声も見られる。

 受賞により、一躍注目を集めることになったアレクシェービッチ。しかし同氏の作品は、すでに絶版のものや、日本で出版をしていないものも存在する。それだけに、「ノーベル賞受賞者の著書なので、再版が期待される」「きっと図書館に入れられるゾ」「これを機に、再版なり新装版なりで読めるようになるかしら」といった声も多い。是非とも世間の期待に応え、書店で手軽に買えるよう広く流通させてほしいものだ。

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■『戦争は女の顔をしていない
著:スベトラーナ・アレクシェービッチ
翻訳:三浦みどり
価格:2,000円(+税)
発売日:2008年7月
出版社:群像社