異例の大ヒット。自虐系芸人・ヒロシの日めくりカレンダーが心に刺さる

文芸・カルチャー

2015/10/26

 昨今、ブームになっているのが日めくりカレンダー。昨年発売の松岡修造『まいにち、修造!』(PHP研究所)の大ヒットに始まり、書店やAmazonでは、様々な著名人からの前向きな言葉が語られ、毎日元気づけてくれるようなモノもたくさん並んでいる。

 しかし、ブームが続くさなか、ひときわ異彩を放つ日めくりカレンダーが発売から5日で2万部を突破するというヒットを成し遂げた。「ヒロシです。」のフレーズでおなじみ、自虐系芸人・ヒロシからの言葉がまとめられた『まいにち、ネガティブ―前向きじゃなくても生きていける』(自由国民社)である。

 のっけから「『前向きに生きろ!』とか『ポジティブに考えよう』などといいますが、僕にはできません」と相変わらずのネガティブさ全開のヒロシ。頭の中でついついあの語り口を想像してしまうものの、「無理にがんばらなくても、それなりに人は生きていけるとです」として収録された言葉の数々は、ヘタに前向きな言葉よりも、心をホッとさせてくれるものばかりだ。

 31日間分、毎日めくれるヒロシのカレンダー。日ごとに独自の目線からの言葉を私たちにそっと投げかけてくれるが、あなどるなかれ、その1つひとつが妙に心へ突き刺さる。例えば、8日目の言葉は以下のとおりだ。

どん底にも安住の地


格差が広がっているといいますが、ずっと底辺にいる自分には、何も変化がありません。
無理に周囲と自分を比較しなければ、どん底にも安住の地はあるとです。
変に焦ったり、悲観したりしないようにして、それなりに楽しく生きましょう。

 どうだろう。かつては一世を風靡しながらも、栄光は今や昔。真に“どん底”を味わったヒロシだからこそ、言葉が何やら“深い”と思えてくるから不思議だ。また、22日目の言葉からは、いわれてみれば「たしかに」といわざるをえない、人間関係の“あるある”も語られている。

「あなたのためを思って……」って、自分のためでしょう?


「つまらない」「面白くない」という人の大半は、僕の芸にお金を払ってくれません。
僕は「口も出すけどお金も出してくれる人=お客さん」の意見だけを信用するようにしています。
自分のことを差し置いて、他人の心配をする人の美談も耳にしますが、よく考えるとやっぱり自分のためだったりしませんか?
必要以上に他人の意見を気にすると、しんどくなるだけだと思います。

 時にはイラッとくるようなきれいごとすら、バッサリとぶった切ってくれるヒロシの言葉は、クスッとしつつも共感できるものばかりだ。その理由は持ち前のネガティブさはもちろん、どこかすがすがしいほどの“クズッぷり”が感じられるからかもしれないが、不思議と「今日も生きよう」と思わせられるカレンダーである。

文=カネコシュウヘイ