【料理】「ひとつまみ」とか「適量」とか「適当」がダメなアナタに勧めたい「理系の料理本」

食・料理

2015/10/25

 「料理は科学だ」という声を聞くことはあるが、毎日のように料理を作っている主婦が、「私たちは料理を“制作”している」とはふつう思わない。料理というものは、献立を考えて家族の「美味しい」という喜びのために作る主婦にとって科学ではなく、あくまで“調理”だ。

 しかし、理系の人にとって、料理は実験や電子機器の制作をするのと同じことらしい。

 この『チューブ生姜適量ではなくて1cmがいい人の理系の料理』(五藤隆介/秀和システム)は料理をしない男性、とくに「理系脳」と呼ばれる数字にうるさく合理的思考が癖になっている理系な人が、料理を楽しく制作するための解説書になっている。

 例えば、調味料の「1さじ」や「適量」などのアバウトな項目は、感覚で料理する人の場合は自分のフィーリングでどうにかなるものだ。少なくとも適量といわれてグラム単位で重さを量るという主婦は、ほとんどいないだろう。

 だが、理系の人にとっては、「1さじ」や「適量」はアバウトすぎてどれくらい調味料を入れていいのか分からない。

 チューブ生姜の量が適量ではなく1センチ。牛丼ひとつ作るのにわざわざフローチャート図が必要になる。肉を切るのにセンチ単位が要求される。本書の冒頭で作られる牛丼の調理過程は、実験過程といったほうが相応しい。料理の準備から、下ごしらえ、実際の調理までとても料理をしているとは思えない光景がつづられている。さながら「何かの実験か?」と言いたくなるほどのめんどうな手間(日常的に料理をする人から見れば)をかけて、1杯の牛丼が出来あがった。

 根っからの理系脳だった著者、五藤さんは適量と言われても、どれくらいが適量なのかが分からず、その度に奥さんを悩ませたそうだ。感覚で料理が出来なかった五藤さんと、緻密に料理の味付けを考えていなかった奥さん。「分からないところが分からない」という理系派の考え方と感覚派の考え方の違いでお互いに苦労しつつも、なんとか夫婦二人三脚で「適量」や「強火」といった、おいしい料理を作るのにかかせない項目をクリアしていく。奥さんの協力のおかげで、料理に絶望した五藤さんが「料理が楽しい」と思うまでに成長する。もちろん、一人前の料理人として成長した後も調理方法は理系テイストたっぷりだ。

 改めて言われてみれば気になる塩・胡椒の適量の本質や、食材の重さ、ふだん料理をする人がほとんど意識しない「たまねぎ1個って何グラムなのか」という部分を数値化するために重さを量るという工程は調理というより、実験そのもの。料理初心者のための心構えを説くときでさえも理系らしく合理性を優先する。「失敗しにくい料理から覚える」「TODOリストで食材を完全に管理」や理系だからこそ思いつく食材の水分量をもとに考える食材を腐らせない方法は合理的で、感覚派の人にとっては難解だが、数字がそえられて解説されているから、かなり説得力がある。

 料理初心者が陥りがちな「調理道具だけを揃える」という失敗も本書では合理的に説明している。それぞれの調理器具に対して、どんな物を選べばいいのか、どうやって使うのかという”初歩の初歩”が参考書のように分かりやすくまとめられている。それに、どんな調理器具を買うか悩んだらアマゾンランキングを頼れ、というのも理系らしい発想だ。

 そんな『チューブ生姜適量ではなくて1cmがいい人の理系の料理』は、理系男子だけでなく、料理を作ったことがないという料理初心者にもオススメな一冊だ。実用的な料理の内容はレシピ選びから、盛り付け法、飾り付け法も分かりやすく、合理的に書かれていて、初心者にとって「痒いところに手が届く」参考書になっている。

 今まで料理を作るときに適量や少々という、料理ならではの不親切な説明のせいで、料理を作ることを諦めて来たという人は本書を手にとってみてはどうだろう。あなたの理系脳を満足させる数々の“解答”のおかげで、料理を作るのが、きっと楽しくなるはずだ。

文=山本浩輔