これは、壊れた女たちの西部劇──乃木坂46が歩む新たな道。舞台『すべての犬は天国に行く』

エンタメ

2015/10/28


 「問題はなにもない。なにもあるはずはない──」

 しかし、その村は問題だらけ。男たちは次々と自殺、残された者たちは殺し合い、閉塞した空間に生きることを選び続ける女たち。果たして、停滞は幸せか? ……乃木坂46のメンバーが超実力派女優たちと新たな一歩を踏み出した。これは、彼女たちからの異文化への誘(いざな)いだ。

 アイドルとして活躍する乃木坂46のメンバーが、ガチンコで挑戦したのはナイロン100℃のケラリーノ・サンドロヴィッチが手がけたシリアス・コメディー『すべての犬は天国に行く』。初演は2001年、下北沢の本多劇場で戸川 純や美保 純が出演、異色の顔合わせで話題を呼んだ作品で、今回も鳥居みゆき、東風万智子、猫背 椿、柿丸美智恵、ニーコ、山下裕子といった異色な顔ぶれが並ぶ。

 それだけにキャスティングされた8人の意気込みもかなりのもので、公開稽古では共演する実力派女優たちに文字通り、食らいつく姿を見せていた。


 10月1日(木)、初日公開稽古前に行われた囲み取材に登壇したのは生駒里奈、伊藤万理華、井上小百合、斉藤優里、桜井玲香、新内眞衣、松村沙友理、若月佑美の8人。それぞれが舞台にかける思いを語った。(※公演は10月12日に終了しています)

上段左より、桜井玲香、新内眞衣、松村沙友理、若月佑美

前段左より、生駒里奈、伊藤万理華、井上小百合、斉藤優里

──演じる役について一言、お願いします。

生駒:私が演じるメリィは16歳ですが、年齢よりもちょっと幼くてかなりクレイジーなところがあるので演じやすかったです! 今回、意気込みを表すために、前髪を短くパッツンと切りました。切り過ぎじゃないかとヘアメイクさんが気を遣ってくれましたが、絶対に自分の髪で作りたくてお願いしました。

伊藤:私は酒場の娘のクレメンタインという役ですが、女の子らしいのに性格が悪くてズバズバと言う役なので嫌われちゃうかもしれないけど、そういう役に挑めることがうれしいです。まだ19歳なので、どのお酒を出したらいいのか全然わからなくてみなさんに教わりました!

井上:おかしな村の物語で、私は早撃ちエルザという唯一、外から訪れる存在ですが、村にいる内にだんだんと取り込まれていってしまいます。なので、お客さまを同じ目線で、外から作品世界に連れて行きたいと思います。早撃ちなのでガンベルトを下げて銃も撃ちます!

斉藤:私は、ご覧のとおり、男性みたいな衣裳ですが、不良の女の子でガスという役です。女の子なんです……!

全員:カッコいいよ! 似合ってる!

斉藤:本当は私も可愛い衣裳が着たかったんですが、生駒がこういう顔が好きらしくて……。

生駒:はい。素直に「タイプです」と敬語で言いに行きました。

斉藤:なので、まあ、いいかな、と思ってます。

桜井:私が演じる、キキさんはお医者様の奥様で27歳の役ですが、共演しているグルーバッハ夫人役の山下裕子さんに本当にメンバーのなかで最年長で27歳だと思われていたことが発覚したので(笑)、結構、イケているんじゃないかと思っています。

松村:さらに、私は16歳で保安官の娘のクローディアという役なんですが、キキとのラブシーンがあって……!

桜井:そうなんです。エロオヤジ風に松村に仕掛けていくんですが、猫背 椿さんやみなさんに教えを請い、すごく苦戦したので注目してほしいです。

松村:ふたりとも恥ずかしくて、気まずくて笑っちゃいました。

若月:私たちだって見てられなかったよ!

生駒:思わず後ろを向いちゃいました……。

桜井:でも、舞台ではちゃんと押し倒して、松村を色気たっぷりに見せたいです。きっと、松村もやってくれるはずです!(笑)

松村:色気、出します!

井上:さらに私は娼婦役の東風万智子さんに口に含んだ水を、ブーッっと吹きかける場面があって、そんなことって人生でなかなかないことなので、何度も練習して、東風さんをびしょ濡れにしてしまいました。ごめんなさい……その場面も注目してください。

新内:私は娼婦の役と新聞配達の少女というひとり二役に挑戦するので、ちがう色を出したいです。声だけの演技があるんですが、息遣いとか、そういったところも感じてほしいです。

生駒:娼婦役だもんね!

新内:……はい!

若月:私はクレメンタインの義理の姉でマリネという役ですが、なぜ松村が16歳の役で、私が28歳の役なのかわかりませんが!(笑) 生駒に「おばさん」と呼ばれ続けています。

生駒:呼び続けます。

若月:『ヴァンパイア騎士』という舞台で 私の父役を演じ、今回、なんと私の使用人役を演じてくださる柿丸美智恵さんが「若月は案外、こっち側だよ(笑)」と言ってくださるので演じきります! 今回、女優だけの舞台でみんながどんどん狂っていく世界に取り込まれていきますが、私は最初にみんなをその空間にひっぱる役なのでがんばりたいです。



──意気込みをお願いします。

生駒:アイドルでもやるんだぞ! というところを見せたいです。

伊藤:今回、ご一緒している女優さんからとても刺激をいただいています。こういう本格的な演劇をやる乃木坂46を観てほしいです。

井上:乃木坂46というアイドルグループがこういう作品をやることの意味を見せなければならないと思うし、壁をぶち破っていきたい。

斉藤:ひとつ前に出させていただいた『じょしらく』で私自身の舞台へのイメージががらりと変わりました。ものすごく楽しい経験だったので、みなさんにも最高のものをお届けして楽しんでほしいです。

桜井:不思議な世界観でギャグも入って混乱するけど、おもしろい作品なのでたくさんの方に観てほしいです。

新内:「えっ、これって誰が演じていたの?」というくらいみなさんを撹乱させたいです。楽しんでください。

松村:みんなで一丸となって作り上げた、自信のある舞台なので初めて私たちを知る方にも観てほしいです。

若月:この舞台がどれくらい通用するか、今からわくわくしています。10月28日(水)に「今、話したい誰かがいる」という乃木坂46の13thシングルがリリースされますがすごくさわやかな曲なので、舞台や歌での私たちの二面性も楽しんでほしいです。



 かくして舞台の幕は開き、娼婦の艶やかさや銃を構える勇ましさ、可憐な毒舌に天然ボケと残酷な無邪気さと日常に秘められたゆるやかな狂気とが入り混じり、物語は終焉に──カーテンコールで全員が踊る、その姿は威風堂々と誇りに満ち、きらきらと輝いていた。アイドル、という枠組みを軽やかに越え、彼女たちは唯一無二の扉を開いていく。その姿に注目だ。

取材・文=おーちようこ