ちょっぴりご褒美、お仕事女子の心のデトックス。コンビニスイーツ開発のひみつ

コミックエッセイ

更新日:2015/10/30

プレミアムロールケーキ

コンビニスイーツの定番、プレミアムロールケーキ

 一昔前はコンビニスイーツのシェアといえば圧倒的に男性だったって知っていましたか?そんなコンビニスイーツ業界に革命を起こしたのが、2009年にローソンが発売した「プレミアムロールケーキ」。女性向けスイーツへと大胆に舵をきったこの商品は、半年間で1800万個を販売し、コンビニのオリジナルチルドデザートとして初めてモンドセレクションで金賞を受賞したほど。

 本日発売のコミックエッセイ『ひみつのローソンスイーツ開発室』(ハトコ/KADOKAWA)では、そんなコンビニスイーツの革命児であるローソンスイーツ開発のひみつを描いています。

 今回ダ・ヴィンチニュースでは更なる「ひみつ」を求め、株式会社ローソンを訪ねました。私たちを出迎えてくれたのは「プレミアムロールケーキ」の産みの親であるデイリー商品部長・鈴木嘉之さんと、同書の主人公・田村ちひろのモデルになった浅岡陽子さん。おふたりに商品開発の苦労やひみつについて、たっぷりと語っていただきました。

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コンビニスイーツの転機

デイリー商品部部長・鈴木嘉之さんと浅岡陽子さん

インタビューに答えてくださった鈴木嘉之さん(左)と浅岡陽子さん(右)

――コミックスの中で、女性向けスイーツの開発は2009年からとありますが、これは何か社会背景や具体的な要因があったのでしょうか?

鈴木:当時どちらかといえばコンビニは20~30代の男性がメインで、デザートも男性が新聞やコーヒーを買うついでに購入していました。ローソンでもそういう商品を出していました。男性客が7割でしたね。
 そんな中、新しいお客様である女性客を獲得しようという動きが、各社ではじまっていました。

――他のコンビニ各社も2009年頃からそういう動きが?

鈴木:はい。ただデザートをここまで女性向けにふったのはローソンがはじめてですね。



「商売のオニ」と目される佐藤部長(モデルは鈴木さん)。
新規市場開拓のため闘志を燃やします。

――社内でもかなり議論されましたか?

鈴木:現場からはかなり反対されましたね。当時は男性がメインターゲットで、そのときの主力商品は、シュークリーム、エクレア、大きなプリンとか。旬や流行りより「わかりやすさ」というキーワードでやっていました。男性はよそ見しないので、わかりやすい。それを180度角度を変えて女性客を獲得しますという話は会議の度にすごく批判を浴びていましたね。

――それに対してはどうやって説得を?

鈴木:デザート市場の大きさとその中の女性比率の大きさ、ターゲット設定をどっちつかずにしてしまうと女性に響かないという話をしましたね。本当に女性客を獲得したいなら、振り幅をかなりもっていかないといけないということを何度も話して説得しました。

――鈴木さんの説得があってこそプレミアムロールケーキが誕生したのですね。その後、コンビニスイーツ市場というのは広がりましたか?

鈴木: 2005年から2009年に緩やかに伸びて、2010年以降からかなり上昇しました。最近はコンビニでデザートを買うというのが普通になりましたね。次のスタンダードを探しています。

原材料が届かない?!困難にめげずに専門店品質を目指す!

――つぎに浅岡さんにお聞きします。新商品を開発するにあたってもっとも苦労することってなんでしょうか?

浅岡: やはり専門店品質を目指して商品を開発することと、店舗数一万店の規模感で商品を供給していくところが一番ギャップを抱えるところですね。ローソン全店舗に商品を供給するには、何トンという単位で原材料を押さえることもあります。ときには外国から船便で何ヶ月もかけて取り寄せたりすることもあります。美味しい食材を探したり、作り込む時に難しいですね。

 あとトラブルもあります。台風がきたりすると原材料が届けられなかったり……。空輸している国の空港がストライキで……というのもありましたね。



コミックスでも原材料調達の難しさが描かれます。

――失敗談は何かありますか?

鈴木:これは女性向けにシフトする前なんですが、「スイーツ幕の内」という幕の内弁当を模したスイーツがあって、ごはんがクリームで梅干しがさくらんぼ、ハンバーグがチョコレートなんですよ。満を持してやったのですが、全然売れなかったですね(笑)

 あとは「ケークサレ」という甘くないケーキがあって、砂糖を入れてないんですよ。パリで最先端の商品なんです!って大々的に宣伝もしたんですが「スイーツなのに甘くない」というクレームがすごくきて大変でしたね。



なにもかもがスイーツ!「スイーツ幕の内」の圧倒的存在感。

――商品化にならなかったボツ企画はありますか?

浅岡:いっぱいありますね……。完成品の状態で、週に5、6品は部長に提案します。

――社長プレゼンに進むものは更に厳選されるんですよね。そもそもこれはないっていうものもありましたか?

鈴木:ありますね。担当者は、メンバーと協力してつくっているのでどうしてもやりたい!という思いがあるんですが、ダメなものは心を鬼にして引導を渡します。時には食べないでダメ出しすることもありますね。

 あと、美味しさはもちろんですが、見た目や色合いもかなり重要です。これは、感覚的、情緒的なものなので、ひとによって良いと思うものが結構違うことが多くてなかなか難しいんです。マンガの方でも開発中のスイートポテトに対して「かわいくない」と言うシーンがありますが、このあたりが最も苦労する部分かもしれません。例えばもっと甘さをおさえろとかそういう指示ってわかるじゃないですか。でも見た目が良くないみたいなことって基準がないですからね。



「情緒がない」「かわいくない」と言われて戸惑うちひろ。
より良い商品を目指して奮闘を続けます。


こちらが実際の商品。見た目もさつまいもな「スイートポテト」

――浅岡さんはそんな数々の商品の中で、思い入れがある商品ってありますか?

浅岡:「スプーンで食べるレモンケーキ」ですね。なんといっても初めて担当した商品ですし、パッケージも何案も作ってアンケートをとったり試行錯誤しましたので。

――たしかにパッケージがとてもかわいいですね!

浅岡: ありがとうございます。あと、スプーンで食べる商品には、お皿に移して食べられるようケーキの下にシートを敷いているんです。「ウチカフェ」(ローソンのスイーツPB)のコンセプトが「いつでもおウチがカフェになる」なので、お客様が好きなお皿にうつして、専門店のケーキを食べている気分が味わえるようにしています。シートのデザインにもこだわっているので、そういった部分も楽しんでほしいですね。

コンビニスイーツの立役者プレミアムロールケーキ、売れ筋は?

――今でもプレミアムロールケーキが一番人気なんですか?

鈴木: そうですね。ローソンでいうと「ウチカフェ」のメイン商品ですし、我々がこれをきっかけにデザートを作ってきたみたいな自負がありますから、お店のかたたちもそういう想いがあって力を入れて販売してくれているんだと思います。

――プレミアムロールケーキは期間限定でたくさんの種類を出されているかと思いますが、過去一番売れた商品は何ですか?

浅岡:一番はやっぱり「あまおう」ですね。次点は「レモンとレアチーズ」です。テレビでとりあげられたこともあり、1日3、40万個くらい売れたこともありました。



期間限定で一番人気「プレミアムあまおうのロールケーキ」


レモンの酸味がアクセントの「プレミアムレモンとレアチーズのロールケーキ」

――なるほど。期間限定とは違いますが、毎月22日にはいちごがのったバージョンが販売されていますよね?

浅岡:はい、そうです。カレンダーを見ると、毎月22日の上には15(いちご)がのっていますよね? そこからファンサービス的にやってみようということではじまったんです。値段据え置きなので実は赤字なんですが(笑) この日は通常の4~5倍くらいの販売数になりますね。
 あと、実は年に1回だけいちごが2つのっている日がありまして。それが来月11月22日の「いい夫婦の日」なんです。良かったらチェックしてみてください。



「プレミアムロールケーキ(いちごのせ)」いい夫婦の日ver.
よく見るとさりがなくいちごがハートになっています。

――ローソンスイーツのひみつ、たくさん知ることができました。ありがとうございました!

『ひみつのローソンスイーツ開発室』

ハトコ/KADOKAWA

「女性にウケるコンビニスイーツをつくれ!」
コンビニ食品=男性向けだった時代、超重要ミッションを達成すべく選ばれたメンバーは、極上のスイーツをつくるべく立ち上がった!
最強のロールケーキのため200種類を超えるクリームを食べ比べ、本場のティラミスを知るためイタリアでティラミスを食べ尽くし、マカロンを極めるためにフランスに渡り、逃れられない体重増加とも戦いながら、スイーツづくりに大奮闘!
おなじみローソン「ウチカフェスイーツ」が生まれる舞台裏を描くお仕事コミックエッセイ。