ラブライブ!サンシャイン!! は中国のオタクに伝わるのか? 中国のラブライブ人気の現在と今後

アニメ

公開日:2015/10/28

 中国オタク事情を連載している百元です。第16回は中国でも大人気な「ラブライブ!」の人気の方向、それに加えて新たな展開である「ラブライブ!サンシャイン!!」が中国のオタク達に伝わるのかどうか、ということに関して紹介させていただきます。

現在中国で最も人気のある日本のコンテンツ、しかし……

 以前のコラムでも書かせていただきましたが、現在の中国オタク界隈で最も勢いのある作品は間違いなく「ラブライブ!」です。

 夏休みや10月の国慶節に合わせて中国の各地で開催された現地のオタク系のイベントでも「ラブライブ!」関係の活動が最大勢力となっていたそうですし、若者がハマる対象として一般のニュースでも取り上げられるレベルになっているという話も聞きます。

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 またネットで飛び交うオタク関係の情報においても「ラブライブ!」は存在感が大きく、様々な「ラブライブ!」に関するニュースが話題となっています。

 例えば中国の都市で「ラブライブ!」の痛バスが走ったとニュースになったり、日本における劇場版の興行収入が好調だと中国のオタク界隈で喜びの声があがったり、聖地の一つであった昌平橋ビルが取り壊されるというニュースが中国のオタク系ニュースサイトやコミュニティを駆け巡ったり……といったことが起こっています。

 他にも中国のアニソン界隈では「ラブライブ!」関連の曲が非常に目立っていますし、中国のオタクの活動の主軸であるコスプレにおいても「ラブライブ!」が最大勢力となっているとのことで、現在の中国では「ラブライブ!」が誰もが分かるオタクのアイコン的な存在になっていると言っても過言ではない状況です。

 もっとも、いくら「ラブライブ!」が大人気とは言え、中国独自の方向になっている所もありますし、関係するもの全てが順調というわけではありません。

 例えば中国で展開されているスマホのゲームに関しては初動時こそかなり話題になったものの、その後の勢いに関しては現地の作品人気から考えると今一つといった状態になっているようですし、日本における「ラブライブ!」関連の新たな動き、特に「ラブライブ!サンシャイン!!」に関してはまだ注目されていません。もちろん情報が中国に入っていないわけではないのですが……

最新の動きが広まらない理由

 この中国独自の事情については、中国における「ラブライブ!」の人気が、主に動画サイトで広まるコンテンツとそれに関する話題が中心になって広がっているという点が影響しているかと思われます。

 中国において「ラブライブ!」はアニメや関連作品を見たり読んだりするよりも、歌を聴いたり、PV的な動画を繰り返し見たりすることによって作品の世界観に浸り、キャラへの認識を深めていくといった形で楽しむファンが多く、それがファンの増加や盛り上がりの原動力にもなっています。

 またそれはコンテンツにハマる際のハードルを下げることにもつながり、「ラブライブ!」は他の日本のアニメ作品などと比べてライトな層や、ネットの交流における話題などのために見る一般のネットユーザー層のファンが随分と多くなっています。

 しかし、そういったライト寄りのファンが多いということは作品に関する情報が、

「ネットで話題にし易いネタ要素を含んでいる」

 或いは

「動画などのネットで拡散し易い、見て分かり易い形になっている」

 といったものでなければ厳しい……という事情にもつながっている模様です。

 現時点では「ラブライブ!サンシャイン!!」などの新しい動きについては、主に文字ベースの情報と転載画像などによって中国に伝わっています。そのため詳しい情報が広まるのはマニア寄りの層までで、中国のオタク界隈のラブライブファンの大多数には広まらない、或いは情報の形がライトな層が気軽に話題にして楽しめる形ではないことからなかなか注目されないようです。

今後日本の新たな展開が伝わり、注目されるとしたら?

 以上のような背景があるので、「ラブライブ!サンシャイン!!」に対する中国のラブライブファンの動きが本格的に出るとすれば、PV的な動画が出たり、キャラクターに関して話題にし易いネタ要素がある程度確立されたりしてからになるのではないかと思われます。

 ただ中国のオタクの人からは、

「確かに難しい状況ではあるが、今の所そこまで悲観的にならなくてもいいのでは?」
「ラブライブが中国で人気になるまでにはかなり時間がかかったから、サンシャインについても結論を急ぐ必要は無いと思う」

 といった話も聞きます。

 実は中国では「ラブライブ!」の人気が無かった、ほぼ注目されていなかった期間もそれなりに存在します。中国本土の方で「ラブライブ!」の人気が爆発したのは2014年の4月以降、アニメの第二期が始まってからで、それ以前のアニメの第一期の頃は鳴かず飛ばずと言うほどではないものの一部のマニアが追っかけている程度でしたし、雑誌展開の時点ではほとんど話題にならずに埋もれていたような所もありました。

 中国のオタクな人達の間で「ラブライブ!サンシャイン!! 」はまだ本格的に注目されてはいませんが、今後の中国における「ラブライブ!」の人気も含めてもう少し長いスパンで見ていくのも悪くはないのかもしれませんね。

文=百元籠羊