いまの語彙で通じる英語を話すには? ―捨てるべき4つのポイント

ビジネス

2015/10/30

『ずるいえいご』(青木ゆか:著、ほしのゆみ:イラスト/日本経済新聞出版社)
『ずるいえいご』(青木ゆか:著、ほしのゆみ:イラスト/日本経済新聞出版社)

 もしも突然、“Please tell me how to get to the nearest station.”と見知らぬ外国人から声をかけられたら、あなたは動揺せず適切に教えてあげられるだろうか。頭には駅への行き方が浮かんでいるのに、それをどう英語で伝えればよいのかわからず、しどろもどろになってしまう人も多いだろう。そうなると、「あぁー、もっと語彙力をつけておけばよかった…」といった後悔が残る。このような体験は珍しいことではなく、この思いは、人として自然な感情といえそうだ。

 ところが、『ずるいえいご』(青木ゆか:著、ほしのゆみ:イラスト/日本経済新聞出版社)の著者は、この感情そのものに警鐘を鳴らす。つまり、「語彙力をつけなければ英語は話せない」という固定観念が英語を話すうえでジャマになっているというのだ。

 最初に断っておくと、この本は新たな知識を習得するための本ではない。想定している読者は、英語を話したいと願い、そのための一定の努力をしてきた人だ。ここで「努力はしていないかも…」と尻込みする人がいるならば、思い返してほしい。私たちは、中学校・高校と英語を学んできたはずだ。簡単な単語ならば知っている。十二分に「英語を話すための一定の努力をしてきた人」にあてはまる。筆者は、このような読者に対し、「この本を読めば、3日で英語を話せる! ことに気づける!」と訴えかける。

 この本において、大切なことは1つ。英語を話すうえで正解は1つでないことに気づき、自分の知っている英語に置き換えるトレーニングをすることだ。私たちは、日本語においてもよくこの「置き換え」を行っている。たとえば、「地球儀」という言葉をド忘れしてしまったら、私たちは、「ほらほら、あのぉ…丸くて、世界地図がのってる…」とでも言って、一生懸命相手に伝えようとする。これと同様のことを英語でするだけでいい。“Like a ball”“World map”といったように置き換える。もし「球体」を“globe”ということを知っていたら、それだけで理解してもらえる(※地球儀:globe)。では、「冷蔵庫」や「浮き輪」はなんと置き換えればよいだろうか。ぜひ考えてみてほしい。この本には、こういったプチトレーニング「イメージメソッド」が全8種類掲載されている。

 さらに、この本では、単語だけでなく、文章を置き換えるトレーニングやその方法論も説いている。たとえば、尊敬できる気持ちを示す「私はあなたに一目置いている」という文章。ズバッというと、“acknowledge someone’s superiority”というイディオムを用いて、“I acknowledge your superiority over me.”となる。もしこの文章がすぐに思い浮かばなかったら、沈黙してしまうのではなく、“I respect you.”や“I want to be like you someday.”と伝えればよい。意味は同じだ。この本には全40種類のトレーニングが掲載されている。このトレーニングをすべて行ったなら、今度は自分で自在に置き換えられるようになる。思い浮かんだ気持ちをそのまま伝えられる術を身につけられるというわけだ。

 この本で紹介されている置き換えのポイントは4つ。

・8割すてる
・大人語をすてる
・直訳をすてる
・抽象語をすてる

 そう、捨ててばかり。筆者は当初、「すてるえいご」にしたかったのだそうだ。それでは「売れない」と言われ…、決めた書名が「ずるいえいご」。全ページカラーで、青木ゆか氏とほしのゆみ氏をモデルにしたミニキャラがあちらこちらに登場するこの本は、英語に苦手意識のある方でも手にとりやすい1冊だ。しかも、椅子に座って勉強モードに切り替える必要はなく、イラストを楽しむ感覚で読み進めていけばいい。読み終えた頃には、自然と長年蓄えてきた英語をコミュニケーションツールとして活用できるようになっているだろう。そんなあなたを見て、周囲はきっとこう言うはずだ。「ずるい!」と。

文=藤田ひかり