“かわいい猫たち”による「時代小説」アンソロジーが登場! Wの癒し効果あり!

文芸・カルチャー

2015/11/5

 とつぜんですが質問です。YESかNOでお答えください。

Q1・時代小説が好き、または読んでみたいなと思っている。
Q2・読書するならやっぱりハッピーエンドがいい。
Q3・純愛や家族愛など、人情味溢れるストーリーに実はけっこう弱い。
Q4・最近どうも疲れ気味。ほっこりと誰かに癒されたい。
Q5・猫が好き。猫のいない人生なんて考えられない。

 もしひとつでもイエスと答えたものがあった方には、『書き下ろし時代小説集 宵越し猫語り』(小松エメル、他/白泉社)をおすすめします。

書き下ろし時代小説集 宵越し猫語り』(小松エメル、他/白泉社)

 これは人気作家5人による短編を集めた書き下ろしアンソロジー。活気と人情に満ちた江戸時代、仕事に、恋に、友情にとがんばる女性たちの姿を描いた5つの物語は、忙しいわたしたちの心をすーっと解きほぐしてくれるでしょう。

 しかも! どの作品にも猫が登場し、重要な役割を果たしているのがポイントですよ。時代小説の書き下ろしアンソロジーはたくさん刊行されていますが、猫テーマで統一されたものは案外珍しいかもしれません。時代小説と猫、というダブルの癒し効果で、「明日からまたがんばろう」という晴れやかな気持ちになれること請け合いの一冊です。

 巻頭の「風来屋の客」では、主人公・お磐の死んだ夫が、なんと猫の姿になって戻ってきます。女手ひとつで商売を切り盛りしてきたお磐に、猫は「今日こそ廃業しないか?」と言うのですが、はたしてその真意とは? 妖怪小説『一鬼夜行』でブレイクした小松エメルが贈る、ファンタジックな夫婦愛の物語です。

 つづく佐々木禎子「猫の目時計」は物知りなのにどこか抜けている寺子屋の冬月先生と、しっかりものの若旦那・徳太郎とのかけ合いが楽しいユーモラスな作品。冬月先生が夢中になって研究するのは、猫の目の細さで時刻を知る猫の目時計。どうしてそんなものの研究を? と問いかける徳太郎に「でも徳太郎くん。猫の目時計は可愛いよ」と答えるのんきな冬月先生が実にキュート。

 一方、大人の恋を江戸情緒たっぷりに描いたのが、宮本紀子の「両国橋物語」。蕎麦屋で働くお初と、両国橋の橋番を務める源蔵。ある事件をきっかけに知り合った2人は、互いに惹かれてゆくのですが、なかなか思いを口には出せず……。両国橋の花火のラストシーンが胸に染みる作品。こうした一途な恋愛ものは、時代小説の雰囲気にぴったりマッチしていますね。

 ハッピーエンドが好きなら、森川成美の「こねきねま 『宿屋の富』余話」を。この不思議なタイトル、よーく眺めてみると「まねきねこ」を逆から読んだもの。さびれた宿屋・清水屋で飼われている猫は、占い師によれば客を追い払う「こねきねま」なのだとか。ところが旅の若い侍・高岡は一目見て「福猫」だという。はたしてどっちが正しいのでしょうか。

『タルト・タタンの夢』などが人気のミステリ作家・近藤史恵による「旅猫」は、老舗の木綿問屋のひとり娘・お縫が主人公。大切に育てられ、ほとんど家から外に出たことがないお縫にある日、お時という友達ができます。2人はお伊勢参りに行ったという猫について、賭けをすることになって……。歌舞伎に詳しい作者らしく、華やかなムードのこの作品で本書は幕を下ろします。

 何人もの作家が参加するアンソロジーは、たとえるなら「おすすめケーキの詰め合わせセット」。自分では手に取らない作家、まだ読んだことのない作家に、気楽に出会えるのも醍醐味です。

 というわけで、

Q6・新しい作家を開拓しようと思っている。

 YESと答えた方もぜひ『宵越し猫語り』を読んで、新しいお気に入りを見つけてください。この本があなたの読書ライフをもっと楽しいものにする、招き猫になってくれますように。

文=朝宮運河