『サードヒューマン』舞台はゾンビと人類が共存する2038年 種族間の抗争と憎しみを描く!

マンガ

更新日:2015/11/20

 ゾンビものというのは、マンガやアニメにおける人気ジャンルのひとつである。しかし、作品が量産されてきたゆえに、「展開」が読めてしまう感は否めない。謎のゾンビ大量発生、襲われる人類、次々と死んでいく仲間たち…。ところが、そんなゾンビを扱いながらも、これまでに読んだことがないような斬新な設定が光る作品が登場した。それが、連載型マンガ配信サービス『GANMA!(ガンマ!)』で連載された『サードヒューマン』(鶴川かきお/アース・スター エンターテイメント)だ。本作は、単行本化されており、11月12日に第2巻が発売される。

 本作の舞台は2038年の日本。ニュータイプのゾンビ「セカンドヒューマン」と、人類が共存している世界だ。このセカンドヒューマンというのは、意志を持ち、言葉も通じるゾンビのこと。ほとんどのゾンビが怒りに任せて人を襲うなか、彼らは理性を保ち、人類と同じような生活スタイルを築いている。そして、そんなセカンドヒューマンから生まれたのが、主人公となる河鍋沙織。彼女は「サードヒューマン」と呼ばれ、見た目は人類のそれと違わないが、どんな怪我を負っても回復する驚異的な再生能力を持つ。いわば、人類とゾンビ、両者の特徴を併せ持つ、類まれなる存在なのだ。

 そんな河鍋の職業は、警視庁の「Z課」に配属された新人刑事。このZ課というのは、多発する「ゾンビ犯罪」を取り締まる部署だ。彼女はそこで、ゾンビと人類の架け橋となるため、戦うことを決意する。

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 上で、「ゾンビと人類が共存している」と書いたが、正確にはそんなに生易しい話ではない。ゾンビたちは「ウォール」と呼ばれる壁に囲まれたZ地区での生活を強いられている。これは無意味な事故や衝突を防ぐため、セカンドヒューマンを守るために人類が築いたもの。人類とゾンビ間で結ばれた、和平協定のもとに建築されたものなのだ。しかし、それに反対をしているのが過激派組織の「屍民解放団」。彼らはセカンドヒューマンの現状に納得せず、警察組織の壊滅を狙う。

 また、人類壊滅を企てる背後にいるのが、極道ゾンビの瓜生。彼は人類に対し深い不満を抱き、Z課の面々に対し、さまざまな罠を張り巡らす。そのひとつが、合成麻薬「デス・パス」。セカンドヒューマンの脳から分泌されるエンドルフィンをもとに製造されるこの麻薬が、物語を少しずつ動かしていくことに…。

 本作は、第一巻の時点でさまざまな伏線が張り巡らされている。河鍋の出生の秘密、彼女の先輩・倉田と瓜生の関係、ゾンビ軍による人類絶滅計画――。はたして、本当の意味で人類とゾンビが共存できる世界はやってくるのか。サードヒューマンである河鍋は、彼らの架け橋になれるのか。単なるゾンビものというくくりを逸脱した本作は、上質のSFサスペンスマンガと言えるだろう。これまでのゾンビものに飽きてしまった…という人にも、ぜひその目で新感覚のゾンビマンガを確かめてもらいたい。

文=前田レゴ