なぜブーム? “学習まんが”がヒットする背景にはあのギャルがいた!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/17

本のがんこ堂 唐崎店の『日本の歴史』売り場。盛り上がりが伝わってくる

 歴史や科学、経済など人々が学習する内容を文章表現ではなく漫画にすることで、主な読者である子どもたちの理解を助ける「学習まんが」。

 中でも、“日本の歴史”をテーマとする学習まんがのシリーズが、2013年12月頃より売り上げが急伸、現在は学研、小学館、KADOKAWA、講談社といった出版大手がしのぎをけずり、来年には集英社も既存シリーズを全面改訂、『NARUTO―ナルト―』の岸本斉史さんら人気漫画家が表紙を手掛けるなど、いま業界内で熱く注目されているのだ。

 

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▼進化する学習まんが。幅広い世代を取り込みブームが加速

 KADOKAWAが今年6月に創業70周年記念事業として刊行した、角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』(全15巻)は、発売後5ヶ月で早くも120万部を突破。同社では好調の要因を「東大流」「コンパクトなサイズ」「豪華なイラスト執筆陣」と分析している。

 「東大流」とは東京大学・山本博文教授による「歴史の大きな流れをつかむ」技法に基づいた構成のことで、歴史まんが本編を読む前に、その時代の特徴がひと目でわかるイラストページを収録、そのイラストのどの部分に時代の移り変わりが現れているかを可視化してわかりやすく解説している。このメソッドが受験を控えた中高生にも受け、参考書としての購入にもつながっているという。

冒頭のイラストページは全巻オールカラーで見やすく工夫されている

 また、今どきの住宅事情からか児童書も「コンパクトなサイズ」が好まれるのだとか。同社が事前に親子モニター調査をしたところ、従来の学習まんがで主流であった「菊判ハードカバー」より少し小さい「四六判ソフトカバー」に人気が集中したため後者を採用、親や祖父母世代からも持ち運びや収蔵に便利であるという点で評価された。

 三つ目の「豪華なイラスト執筆陣」による表紙は子供たちの“ジャケ買い”を誘う。『ケロロ軍曹』の吉崎観音(みね)さん、『デスノート』の小畑健さん、スタジオジブリの近藤勝也さんらを起用、マンガの内容もストーリー性を重視することによって子供たちの興味・関心を強く喚起した。近年の児童書における表紙イラストの重要性はますます高まっており、ライトノベルや児童書レーベル「角川つばさ文庫」など子ども向けの書籍にノウハウを持つ同社が強みを発揮した格好だ。

そのほか、大ヒット作『涼宮ハルヒ』シリーズのいとうのいぢさんなども表紙を描く

 このように出版各社が、幅広い世代のニーズに応えるべく学習まんがを進化させることで、参考書や教養書としても購入されるようになり、今もなおブームが続いている。

 

▼ブームの火付け役は「ビリギャル」だった!

 では、ブームのきっかけは何だったのか? 出版取次ぎ大手の日販によれば、学習まんがの売上が突然伸び始めたのは2013年12月。これは100万部以上の大ベストセラーとなった『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話(ビリギャル)』が発売された月であり、同書のなかで著者で塾講師の坪田信貴さんが、歴史が苦手な生徒の学習法として小学館の『学習まんが 少年少女 日本の歴史』(全23巻)を名指しして、ひたすら読むことを勧めたことから火が付いた。同書は昨年、前年比3倍の約1万5千セットを販売し、この人気が各社の新シリーズにも波及したという。

映画版も観客動員数200万人を突破し大ヒット

 今年に入ってもその勢いは衰えず、むしろ5月に『ビリギャル』の映画が公開、6月に前述の「角川まんが学習シリーズ」が発売と市場を盛り上げる要因が重なったことにより、さらなる活況を呈している。これからのクリスマス・正月商戦、また受験シーズンも控えており、まだまだこの人気は続きそうだ。

 歴史は今でも新たな学説が発表され、そのたびに教科書なども改訂されていく。「鎌倉幕府成立は1192年ではなかった」「織田信長が今川義元を破った桶狭間の戦いは奇襲ではなかった」「士農工商という身分制はなかった」などなど、はるか昔に日本史を学んだ世代からすると、思わず「えー!」と驚いてしまうような事柄も結構多い。また、個人の歴史観も問われる今、ゼロから学べる歴史まんがは大人の読者にも有用と思われる。

 我々の祖先はいかにして政治・経済・文化などを育んできたのか? 興味がある方はぜひ手に取ってみてほしい。

角川まんが学習シリーズ 日本の歴史

角川まんが学習シリーズ
『日本の歴史』 2016特典つき 全15巻セット

山本 博文 (監修) / KADOKAWA

これが学習まんがの最先端! 歴史の流れがおもしろいほどよく分かる、最強学習まんがシリーズの2016年版特典付きセットを数量限定で発売中。歴史の流れが学べるカードゲーム「日本史トラベラー」付き!

 

 

★スペシャル企画!★

角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』のヒットを記念して、
同書を監修した東京大学教授・山本博文先生と
『ビリギャル』の著者・坪田信貴先生の対談が実現しました。
11月24日以降に公式サイトで公開予定。乞うご期待!

『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史』公式サイト