京大医学部で教える「役立つ情報」を見極めるためのABCDEテクニック

ビジネス

更新日:2015/11/13


『京大医学部で教える合理的思考』(中山健夫/日本経済新聞出版社)

 情報が氾濫する現代。どの情報がウソで、どの情報が信用に足るのかを見極めるのは容易でない。どんな人でも、自分にとって都合の良い情報を信じてしまいやすかったり、わかりやすい二分論に飛びついてしまったり、個人的なイメージで決めつけて物事を判断してしまったりする場合がある。しかし、例えば命をあずかる医療現場で、そのような“非合理的思考”は許されない。

 『京大医学部で教える合理的思考』(中山健夫/日本経済新聞出版社)の著者は、京大医学部で学生に教える現役教授。京大医学部で教える「合理的思考」のテクニックが紹介されている。

 かつて、医療分野でも現場の勘や経験だけに頼り、事故につながるケースがあった。その反省から、科学的根拠を高いレベルで重視し、活用することを目的に生まれたのが「EBM(evidence based medicine)」(根拠に基づく医療)の方法論だ。合理的思考につなげるための信用に足る情報を得るために、EBMでは「ABCDE」の5つのポイントで情報ひとつひとつを精査するという。

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【A】Available(利用可能な)
…実際に自分が使える情報かどうか。当然のことながら、海外の文献であったり絶版になっている本などの情報は利用困難だ。しかし、現代はインターネットやデータベースの発達で利便性が改善されつつある。

【B】Best(最良の)
…妥当性が高いか、つまりきちんと因果関係を検証できているか。「妥当性100%」という完璧な科学的根拠がある情報はまず無いので、妥当性がもっとも高い情報を選ぶ。

【C】Clinical(臨床の)
…「理論的な情報」より「実証的な情報」を重視する。例えば、計算上の話より、現実の結果を重視する、ということ。

【D】current=upDated(現在の) ※Cが並ぶのでupDatedのDに置き換えている
…情報には鮮度があり、新しい研究などによって従来の情報が否定されることがあるため、直近で最良のデータを重視する。

【E】External(外部の)
…自分や自分が所属する組織内の知見や情報より、当事者性が比較的低くバイアスが生じている恐れが少ない外部の知見や情報に信頼を置く。

「ABCDE」に沿って、インターネットにおいて信頼度が高い情報を得ようと考えるなら、

●玉石混交な私的情報より公的情報…具体的には、例えば政府機関や大学・研究機関が発信しているものを

●更新日が直近のものを

●転載されている情報なら原典を

 といった方法が効果的であることがわかる。

 とはいえ、時間は無情にも刻々と流れる。情報をじっくりと精査する時間がない場合はどうするのか。そういうときは「ヒューリスティック」…つまり個人の経験知による判断で対応せざるを得ない。しかし、ヒューリスティックにおいても、より合理性を高めるために、普段から新しい経験をどんどん積み重ねて「経験のアップデート」を図ることと、経験知による判断を過信しないことが肝要だとしている。

文=ルートつつみ