ライトノベルを読むのは、低俗? 幼稚? その答えがここにある! 『下読み男子と投稿女子~優しい空が見た、内気な海の話。』

マンガ・アニメ

2015/11/17


『下読み男子と投稿女子~優しい空が見た、内気な海の話。』(野村美月/エンターブレイン)

 ライトノベルが好きだ!と聞いて、あなたはどう思いますか? 現在、ライトノベルに明確な定義付けはされていませんが、一般的にライトノベルと呼ばれているものは、表紙に漫画風のイラストがついた、若い読者を対象にした読み物をさします。ここ十数年の間でライトノベルの出版点数は爆発的に増加し、毎月100作を超える新刊が書店に積まれています。しかし、ライトノベルの印象は決していいとは言えません。今回は良くも悪くもライトノベルのイメージについてよく書かれている『下読み男子と投稿女子~優しい空が見た、内気な海の話。』(野村美月/ KADOKAWA)をご紹介します。

 本作は、ライトノベルの新人賞で下読みをする男子高校生・青と、新人賞に作品を投稿する女子高校生・氷雪の青春創作モノのライトノベルです。この「下読み」とは新人賞に送られてくる数多くの投稿作品を読んで、次の選考へ進めるか判断する役目を担った人たちのことで、主人公の青は一次選考から二次選考に進めるかを判断する、最もレベル差のある原稿を、最も大量に読まなければならないポジションにいます。そんな彼が、ライトノベルを書いていることが同級生たちにバレそうになった氷雪を助けたことから、物語が動き出していきます。

 この物語には、創作手法、青春、恋愛、いろんな要素が詰まっていますが、その中でもライトノベルを取り巻く環境は読んでいて殺伐とした気持ちになります。ライトノベルを読むのが好きな青や氷雪に対し、同級生たちが示したライトノベルへの反応はオタク、キモイ、レベル低すぎと。そして、そんな彼らの上をいく反応をみせるのが、氷雪の祖母。氷雪がライトノベルを読み書いていたことを知ると、低俗、破廉恥、害悪、幼稚、不快と言葉をあげ、大罪人を見るような目で氷雪を見下します。この氷雪の祖母は、過去の苦い経験からライトノベルを毛嫌いするようになったのですが、それでもなかなかのけなしぶりです。大げさとも思える反応ですが、現実にもライトノベルは低俗だの稚拙だのとネットで叩き、文芸くずれと揶揄する人がいるのは事実です。物語のなかに出てくるライトノベルの印象についてもいえることですが、ライトノベルを読んでの評価というよりもイメージが先行している印象が強いですね。ライトノベルはバトルやファンタジー、ラブコメ、SF、ミステリとジャンルが広いからこそ、良くも悪くも、いろんな作品がみつかります。そういった先入観で本を探せば、そればかりが目につくのかなと。

 こういった感性や本の見方とは逆をいくのが、この作品の主人公である青。彼は、言葉足らずな文章、強引な展開、無茶苦茶ともいえる作品を読んでも、「おもしろい!」と、それぞれの作品の良さを見つけ、嬉々としてページをめくります。そんな青の叔父である朔太郎が、青を羨ましく思いながら、言ったセリフが印象的だったのでご紹介します。

「他人の作品が、いかにつまらなかったかをドヤ顔で長弁舌するようになったらおしまいさ。あれは最高に醜悪だ」

 何を見ても、何を読んでも、前よりも面白く感じなくなった虚しさを感じていた、朔太郎は言います。触れた作品に対して悪いところばかりが見えて、そんなふうにしか見ることができなくなったらおしまいだと。本という作品について改めて、考えさせられる一言です。読んだ本の量が増えていくにつれて、自分の中で好みが出来上がって、視野は狭く、上から目線で本を見ていたような気がします。ライトノベルに関しても十代が読んで面白いものだろうと、そういったイメージが先行して手に取りませんでした。そんな考えは取り去って、もっと純粋な気持ちで本の前に立てたら、面白いと感じることも増えるでしょうか。

 このように、本についていろいろと考えさせられたわけですが、この本の良さはそれだけではありません。創作に興味がある人や、甘酸っぱい青春を味わいたい人にも、オススメできる要素がたっぷりと詰まっています。ライトノベルでしょなんて言わず、ぜひとも読んでほしい一冊です。心の垢がとれますよ。

文=タカタ