好きな人に「柴犬」として好かれてしまった女子大生の運命は!?

マンガ

公開日:2015/11/18


『わたしはあなたの犬になる』(都 陽子/祥伝社)

 気になる人ができたら、恋する乙女は誰でも、その人の一番になりたいと思うもの。友達や妹分では、恋の温度が上昇するにつれ、どうしても我慢ができなくなる。

 私だけを見ていてほしい。「かわいいね」って言ってほしい。頭をなでてほしい……。恋する乙女は、繊細なガラスのハートの持ち主でもある反面、意中の彼を独占したい想いが膨らみ、だんだんと欲張りになってしまう生き物なのだ。

 では、意中の彼に一人の女性としてではなく、「柴犬」として好かれてしまった場合、あなたは一体どうするだろうか? ……ちょっと待って。「柴犬って、人でもないわけ? 何をわけのわからないことを!」なんて言わないでほしい。都 陽子作のマンガ『わたしはあなたの犬になる』(祥伝社)では、意中の彼に告白してフラれたものの、柴犬に変身している時だけは、めちゃくちゃかわいがってもらえる一人の女子大生の日常が描かれているのだ。

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 本書の主人公は犬童美希(いぬどうみき)。大学に入学早々、キャンパスでも有名な読者モデルをしている、ハーフのイケメン・吉高(よしたか)くんに恋に落ちてしまう。彼女は、高い塀を野生児のような身のこなしで登る身体能力を持ち、また性格も大らかで、やや天然。良くも悪くも、物怖じせずに恋した相手に突っ込んでいくタイプである。

 口下手で、知らない人と話すのが苦手な吉高くんは、美希とは正反対の性格で、何度拒絶しても、空気を読まずにアタックしてくる彼女にどうやら嫌悪感を抱いている様子。そのため、彼女が勢いで「好きです」と告白してきても、「オレは嫌い」と間髪を入れずにフッてしまう。

 ショックを受けた美希は、フラれた後、ヤケ酒をしようと公園へ向かうのだが、20歳になったばかりの彼女は、飲みなれていないせいか、少し口にしただけでそのまま意識を失ってしまう。そうして、目が覚めたときは、なんと大好きな吉高くんの家で、柴犬の姿になっていたのである……!

 犬童家は、犬に変身する一族の末裔らしいのだ。変身する条件は二つあって、一つは「犬と同じくらいの体温になること(37.5~38.5度くらい)」、もう一つはなんと、「恋をすること」なのだという。そしてなんと、元に戻る場合は「好きな人にキス」しなければならないというオマケつき!

 柴犬の姿になった美希は、ドアノブ一つ開けられず、水一つ上手に飲めず、トイレすら自由に行けず、吉高くんの前では散々苦労していた。しかし、柴犬になって好きな人を一途に見つめる彼女が、相当かわいかったこともつけ加えておかなければならない。

 いつも人間の美希には冷たい吉高くんだが、正体を知らないとはいえ、柴犬になった美希にはとても優しいのである。美希も彼の態度には柴犬の姿でありながら、素直に喜ぶ。しっぽを振りながらあおむけになったり、彼をご主人様のように、クリクリとした柴犬独特の大きい目でジーッと見つめたり……。

 筆者も柴犬を飼っているが、犬になった美希の、おてんばで表情がクルクルと変わる様子は、まるで本物の柴犬を見ているかのようで、胸の高鳴りが止まらなかった。また、美希の弟の諭吉は黒柴に変身するので、柴犬が好きな人にとっても、たまらないマンガであることは間違いない。

 柴犬に変身する能力を持つ美希は、大好きな吉高くんとの恋を無事成就させることができるのだろうか。犬の姿で愛される美希は、とってもかわいくてたまらないけれど、一人の女性として吉高くんに愛される日が来ることを、恋する乙女の一人として、目をキラキラさせながら待ちたいとも思う。

文=さゆ