ヘンタイ系漫画家と結婚したオタク嫁の新婚生活とは？

　マンガ、アニメ、オンラインゲーム、美少女フィギュア。人生を捧げるほどオタク趣味にどっぷり浸かる2人が結婚したら？ 夢のような毎日か、それとも破滅の道か……。『嫁いでもオタクです。』（双葉社/カザマアヤミ）では、オタクな夫婦の日常が描かれている。

　本作は、漫画家のカザマアヤミさんによる『恋愛3次元デビュー　30歳オタク漫画家、結婚への道。』の続編。前作ではアニメと美少女が大好きなカザマさんが、男性免疫ゼロのまま婚活をスタートし、めでたく現在の旦那さんと結ばれるまでのストーリー。彼女を見初めたのはヘンタイ系漫画家の紺野あずれさんで、本人も相当マニアックな趣味の持ち主だった。結婚後もオタク趣味を続けるの？ それとも2人して卒業？ オタクではない編集者がさまざまな質問を投げかけ、彼女たちの日々が暴かれてゆく。

　2人の関係は、普通の夫婦とちょっと、いや、かなりズレている。たとえば、旦那の紺野さんが買ってきたエロ本は一緒に楽しみ、ソーシャルのアイドルゲームにハマっていた頃は2人で狂ったように課金していた。無論、家計は逼迫し、半年で合計数十万円が消えたとか……。同じ趣味を持って理解があるからこそ、歯止めがかからなくなることもあるようだ。

　結婚したカザマさんの一番の変化は、エロに目覚めたこと。性の知識がほとんどなくてエロ＝生々しくて気持ち悪いもの、怖いものと思っていたが、紺野さんが爽やかな笑顔で無修正AVを見たりエロ漫画用語を教えてくれたりしているうちに、「エロおもしろいよエロ!!」と気づいてしまったそう。おかげで今はすっかりエロが日常になじみ、紺野さんが作ってくれたランチに「しゅごいぃぃ！　パスタしゅごおぉぉぉい!!」と褒めちぎり、「お腹いっぱいです！　あへぇぇ」とウットリ。エロ漫画で頻繁に見かける喘ぎ声を会話に混ぜながら、毎日楽しく過ごしているという。仲が良いことはいいけれど、大事なものをなくしている気がしてならない。

　紺野さんは二次元の女の子への欲望をオープンにしている。一方で、ザマさんはハマった男キャラをコソコソと楽しんでいる。その理由は、別の男に夢中なのは浮気っぽくて罪悪感があるから（純粋なのやらぶっ飛んでいるのやら……）。しかしカザマさんは必死に隠しているつもりでも、キャラを見ていつもニヤニヤソワソワしている姿はとても分かりやすいらしく、紺野さんはすべてお見通しだった…というオチもある。
　手放しでうらやましいとは言えないが、しみじみいいなぁ……と思ってしまう2人の関係。それは、互いが互いを尊重しあっていることが感じ取れるからではないか。お金がかかる趣味も相手が楽しそうだからどんどんやれと応援し、好きなものに突っ走るところもひっくるめて大好き！　という感情が、言葉はなくてもひしひしと伝わってくるのだ。

　2人にしか作れない愛の形は、すこし変わっているけど、理想的といえるのかもしれない。

文＝松本まりあ