日本が「自殺未遂者」を見捨て、死にきれなかった者が集まる「自殺島」。極限状態のサバイバルマンガ『自殺島』14巻発売!

マンガ

更新日:2015/11/27


『自殺島』(森恒ニ/白泉社)

 40秒に1人。この数字がなにを意味するか、ご存じだろうか? これは、世界のどこかで、自らの命を絶っている人の割合だ(世界保健機関2012年調査結果より)。また、自殺者が多い国のランキングで、日本は18位に位置している。高所得国に限っていうと、なんと4位。これはもはや無視できない現実ではないだろうか。人が自殺を選択する理由はさまざまだと思う。仕事上の悩み、友人関係のトラブル、未来への不安…。しかしながら、日本は真剣に「自殺者の減少」に取り組む必要があるのではないだろうか。

 『自殺島』(森恒ニ/白泉社)は、そんな現実を描いたサバイバルマンガだ。ただし、本作における日本が選択したのは、自殺未遂者を、「自殺島」と呼ばれる島へと押し込めてしまうという解決策。その島へ流されてしまった人間は、死亡者として扱われ、すべての権利が取り上げられてしまう。島から脱出することは許されず、万が一、島の周囲1km以上の海域を侵してしまった場合は、「領海侵犯」として処分されるという。

 本作の主人公・セイも、生きることを放棄して、この島に流された人物。自殺未遂の治療中、医師に「もう終わらせてください」と告げたため、自殺島行きとなってしまったのだ。眠りから目覚めると、そこは見知らぬ島。そして周囲には、セイと同様の自殺未遂者たち。戸惑いと動揺が広がるなか、今度こそはと死を選ぶ者もいれば、こんなところでは死ねないと生き延びることを決意する者もいる。そう、自殺島に流されたことで、あらためて「生きたい」と生に執着してしまうのだ。主人公・セイも同様に。

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 本作は、「自殺」というテーマを扱いながらも、そこで描かれているのは、極限状態を生き延びるというサバイバルドラマ。なんと、新日本プロレスに所属する棚橋弘至選手や中邑真輔選手もその世界観に共感し、熱烈な応援を寄せている。リングの上で死闘を繰り広げる男たちもお墨付きという、シリーズ作品なのだ。人間としての尊厳を奪われた状態で協力し合う未遂者たち、やがて考え方の違いで生まれる対立勢力、そして巻き起こる殺し合い…。本作は、実にスリリングな展開のため、ページをめくる手が止まらない“一気読み” 必至作品。気がつけば、セイのサバイバルを一気に追いかけているはずだ。

 11月27日(金)には、第14巻が発売されたばかり。最新巻では、島で分裂してしまったグループの抗争が描かれている。未遂者同士力を合わせて生きようと願うセイたちと、暴力ですべてを支配しようとするサワダたちのグループ。彼らはお互いを理解し合うことができない。そして、セイに求められるのは、「サワダの殺害」。生きるために人を殺すのか。死を望んでいた自分が人を殺すのか。さまざまな思惑が入り乱れるなか、セイが決断したこととは――。

 本作には、キーとなる女の子がいる。それが「リヴ」。セイに救われた人物だ。常に行動をともにする、セイとリヴ。生とLive。その名前に作者がこめた意味はなんなのか。それを探りながら読むのもまたおもしろい。

 自殺をフックに、生きることについて考えさせられる『自殺島』。重々しいテーマではあるが、人間の根源に迫った一作は、読み手の心を激しく揺さぶるはずだ!

文=前田レゴ

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『自殺島』公式サイト
2015年12月11日より新日本プロレス・棚橋弘至×作者・森恒二のクロストークを
同12月25日より新日本プロレス・中邑真輔×作者・森恒二のクロストークを掲載!