美味しい“肉”食べたくないですか? 家庭でお肉をもっと美味しく食べるための本

食・料理

公開日:2015/11/29


『大人の肉ドリル』(松浦達也/マガジンハウス)

 女性の尻を追いかける肉食系男子は、ずいぶんへった。だが草食系男子だって、肉は食う。食べる肉がウマ ければ、草食系男子も、肉食系女子もみんなハッピー、幸せ気分になること間違いなし。もちろん、高級な店に行けば、いくらでもうま い肉は食べることが出来るが、出来 ることなら日常的にうま い肉を食べたいものだ。そんな肉にうるさい本当の意味で“肉食”なアナタには『大人の肉ドリル』(松浦達也/マガジンハウス)を薦めたい。

 日本人は、歴史的に魚を食の中心として来たからか、驚くほど肉の扱いがヘタだ。焼肉という客に肉を焼かせるスタイルの店が、この国には2万店以上もあるのにもかかわらず、私たち日本人は“ご馳走”であるはずの肉を雑に扱っている。世間一般に言う「良い焼き加減」はすでに焼き過ぎなのだ!

 例えば料理番組でも言われる「肉の表面を焼いてうま味を閉じ込める」という調理法は肉のうま味を閉じ込めるためではなく、肉に焼き目をつけることによって、風味を豊かにすることが目的である。また、豚肉はしっかり火を通さなきゃと、せっかくの美味しい豚肉を、カリカリになるまで火を通すのは大きな間違いなのだ。本当に美味しい豚肉を食べたいのなら、豚肉の中の色が美しいロゼ色になるまで焼くのが、本当は正しい。

advertisement

 かつては、焼いた豚肉の色がロゼ色をしていたら「しっかり焼けていない!」と文句を言われたものだが、その常識は間違いだったのだ。

 本書では最新の科学研究に裏づけられた本当に美味しい肉を食べるためのレシピがいろいろ紹介されている。家庭料理でお馴染みのハンバーグをワンランク上のお店の味にする調理法や、外はカラッと中は肉汁が溢れるジューシーな唐揚げの作り方から、週末に時間をかけて作りたい内臓肉を使った料理、手の込んだレバーペーストの作り方も本書を見ればプロの味と変わらない、美味しいモノを作れるようになる。

 本書は自分の肉料理のレパートリーと、より美味しい肉料理を作りたい人のための練習書になっている。料理をまったくしない人にとっては、少々難易度が高い本ではあるが、普段から料理を作り慣れている人には、とても参考になる1冊だ。これまでの肉料理の常識が覆される、新常識の数々にアナタはきっと驚かされることになるだろう。

 私も、本書を参考に肉の温度に気をつけながら、ガッツリと肉のうま味を味わえる「ビーフステーキ」に挑戦してみたのだが、確かに今まで適当に味付けして、焼いて来た自分で作ったビーフステーキとは、まったく違った。上品で肉の甘味を感じるビーフステーキを作ることが出来た。

 今まで、ただ焼くだけだった肉料理に本書で知った「肉を休める」という工程を入れただけで、その味は格段にウマ くなった!

 私のような普段からあまり料理をしない人間でも、本書を読みながら肉を注意して焼いただけで、美味しいビーフステーキを作ることが出来たのだから、料理を作り慣れている人間が、本書を参考に新常識を取り入れて肉料理を作るならば、高級な店で食べる肉料理の味をばっちり再現できるに違いない。

 本書では洋風な肉料理だけでなく、塩麹などを取り入れた漬け込むタイプの和風の肉料理や、黒酢を使った中華風の肉料理なども紹介されているので、夕方の献立に悩んでいる食べ盛りで肉を求めるお子さんをお持ちの主婦には、大きな武器となる本だろう。

 今まで、肉料理と言えば焼くだけで済ませていた人にとって、本書は新しい「肉の地平線」を開拓する1冊となるに違いない。健康のことを考えれば肉は控えるべきなのかも知れないが、肉だって貴重なタンパク源だ、決して食べないほう がいいというワケではない。健康に暮らすためには、やはり肉を食べることは必要不可欠だ。

 それに、どうせ肉を食べるなら美味しいほうがいいに決まっている。これまで家で、お店のように美味しい肉料理を作ることが出来なかったという人は、本書を活用してプロの味と変わらない肉料理をご家庭で作ってみてどうだろう。

文=山本浩輔