「このままじゃマズい…」アラフォー独身男の自堕落ポップノベル【第2回暮らしの小説大賞受賞作】

文芸・カルチャー

2015/12/3

同じような毎日の繰り返しに、安心しつつも、辟易としている。誰かがどうにか、今の自分の生活を変えてくれぬものかと、他力本願。自分を変えられるものは自分しかいないことは分かっているが、途方もなく続く日々の生活に追われて、どうも上手くいかない。何十年と似たような暮らしを続けていれば、そうやって、「このままではよくない」と思いつつ、すべてが惰性に流れてしまうものなのだろう。

丸山浮草氏著『ゴージャスなナポリタン』(産業編集センター)は、40歳・独身の閉塞感にまみれた「暮らし」を明るく描いたポップノベル。第2回「暮らしの小説大賞」を受賞したこの作品は、独身の人はもちろんのこと、日々の生活に「このままではマズい!」という不安を抱えた人ならば、誰でも共感できる内容なのではないだろうか。選考委員たちをざわつかせたユニークな文体は、アラフォーを“こじらせた”男性の暮らしに巧みにマッチしている。決して理想的ではないライフスタイルと、これからの生活への不安感。安定しているようで不安定な生活は、読む人に「暮らし」の意味を問い続ける。

舞台は、日本海を臨むとある町。しがないデザイン会社で文案担当としての仕事をこなす「ともふさ」さんは、40歳を越えてもなお独身、年老いた両親と同居する独りっ子だ。親に甘えっきり、マンガから哲学書まで雑多な本の山に埋もれた部屋の、湿った万年床の上でうだうだ過ごす「ともふさ」さんの自堕落な暮らしは、それなりに幸せではある。だが、きっとこのままではいけない。いつかは生活を変えなくてはならない。しかし、そんな気概を持てないまま暮らすなかで、変化は突然やってくる。大企業からのヘッドハンティング話、恋人(いることが驚き!)の妊娠、父親の交通事故…。「ともふさ」さんは、いったいこの危機をどう乗り越えるのだろうか。

こんなに頼りなくて情けない主人公も珍しい。給料も決して良いわけではない暮らしの中、彼がこれからどうやって生きていくのかと、どうしても心配になってしまう。そして、この本は珍しいことに、本の最初と最後で、「ともふさ」さん自身の成長がほとんど見られないのだ。「おいおい…この主人公は大丈夫なのか」と困惑させられるが、だからこそ、妙なリアリティがある。人はなかなか変われない。アラフォーになればなおさらだ。だが、あがかなければならない時は必ず、来る。だらしない「ともふさ」さんの奮闘は、決して他人事ではない。

「こんな生活いつまでも続かないよなぁ」
「誰にだって、なにがあったって、そこで踏ん張らなきゃいけない自分の持ち場があるからな」

さやえんどうのカレー炒めや市販のゼリーのプラスティックカップを再利用したものに入った母親手作りのコーヒーゼリー、焼きそばパンに、そしてゴージャスなナポリタン。物語の端々で登場する食べ物の描写も非常に個性的だ。料理のチョイスにも現実味があるが、その描写にはついついお腹がすいてしまうことだろう。独身アラフォー男性の生活を明るく、コミカルに描き出したこの物語は今の暮らしに悩む、すべての人に読んでほしい小説だ。

文=アサトーミナミ