「自分をないがしろにしてはいけない」 プレム・ラワットの“言葉”集

文芸・カルチャー

2015/12/4

私たちは日ごろから、人を信じたい、愛がほしい、幸運に恵まれたい、特別な才能がほしい、自分の選択を信じたい……など、多くのことを期待して生きている。期待は未来の自分への希望であり、飽くなき渇望でもある。

しかし、期待したものが手に入らないとき、自分への不信感が生まれる。人を疑い、愛を諦め、不運を嘆き、そんな自分に失望してしまう。時として、周囲と比較して落ち込んだり、誰かのせいにして断念したりすることもある。本当は欲しているものを十分に手にしていることに気づかずに。

インド出身のプレム・ラワットさんは著書『Pot with the Hole 穴のあいた桶』(文屋)で、人間が持つこのような「満たされない心」を、シンプルなメッセージとユニークな寓話を用いて勇気づけ、前向きに導いていく。8歳のころから、父の教えを受け継いで講演を繰り返してきたラワットさんは、世界250都市での講演会を通して、1500万人もの人々の心を打ってきた。2012年には、ネルソン・マンデラ、ヒラリー・クリントンと並び、アジア・パシフィック・ブランド財団より、特別功労賞を授与されているという。

著書にて、ラワットさんは「多くの人が、自分とは何者かを知りません」と書いている。そして、多くの人々がなによりも大切な「自分」をないがしろにしていることに対し、優しい言葉で警告を贈る。

あなたはこれまで、あなた自身とつきあってきましたか?
自分のことを知ろう、愛そうとしてきたでしょうか。
私は、どのように見られているのか?
職場の同僚、近所の人、世間の人は
私をどんな人間だと思っているのだろう?
ついついそんなふうに世の中のものさしによって
自分を測ってしまうことがあります。
(中略)
自分を測ることに時間を費やさないで
心のなかの内なる声に耳をかたむけてください。
あなたにとって、あなた自身は一生の友であり
どんなときもそばにいる心強い味方なのです。
Pot with the Hole 穴のあいた桶』より

本当の望みをさておいて、やみくもにすばらしい出来事を期待したり、周囲の人と競い合ったり、嫉妬心にとらわれてしまったり、自信をなくしてチャンスをふいにしたり……そうするうちに、私たちは本来持っている自分の力すら、信じることができなくなるのかもしれない。そうなると自分を満たす方法もわからず、自分が満たされるに値する人間かどうかさえ、疑ってかかるようになってしまう。

「心が満たされていることは、すべての土台のようなもの」とラワットさんは書いている。本書は「Choice」「Peace」「Life」などいくつかの章に分かれているが、正しい選択をするためにも、平和な人間関係や世の中を目指すためにも、充実した人生を送るためにも、まずは自分の心ありき。「土台がしっかりしていれば、進化の先にある高い理想に向かって、自分の力を思う存分に発揮できます」という言葉通り、とかく他人の目や評価を気にしがちな現代において、まず自分を知り、その心を大切にし、満たすことを教え諭す彼の言葉は胸に響く。

人生には、予期せぬ出来事が多い。自分を信じることを諦めて絶望することは、もしかしたら自分を信じ続けるよりも簡単なことかもしれない。でも、あえて自分の持てる力を信じ、自分の心に耳を傾けることが、荒波をかいくぐる最良の武器になることを、ラワットさんが発する言葉の数々は教えてくれている。

文=富永明子

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