人間関係・業績不振・仕事恐怖症…。困りごと解決には「U理論」が効く! マンガでエッセンスを簡単に知ろう

ビジネス

更新日:2016/1/13

 デキる人はなにが違うのか? 多くのビジネス書がこの問いに答えを示している。しかし「ハウツー本」と呼ばれるように、多くの本が「やり方」を教えてくれるものの、それが本当に自分に合っているのか。もしくは今まで誰も体験したことのない局面におかれたとき、誰かのやり方は自分にあてはまるのか。

 過去のやり方ではなく、まったく新しい、しかも自分に適したやり方。そんな問題解決策を知り得たなら、最強の、いや天下無双のビジネスパーソンになれるのかもしれない…。

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 職種、経験、ポジションに関わらず、パフォーマンスを最大化させる方法があるという。それは「U理論」。MITのC・オットー・シャーマー博士が生み出したロジックだ。もっと正確にいうと「過去の延長線上ではない変容やイノベーションを個人・ペア(1対1の関係)、チーム、組織コミュニティ、社会のレベルで起こすための原理と実践の手法を明示した理論」である(ドヤァ)!

 過去に「U理論」についての本を読み続けることが辛くなったあなたは悪くない。こんな高尚そうな理論を読むには日々忙しすぎる。だが安心して欲しい。「U理論」のエッセンスを手軽に知ることができる書籍が登場した。『マンガでやさしくわかるU理論』(中土井僚:著、松尾陽子:作画/日本能率協会マネジメントセンター)である。

 とはいっても、三国一の仕事マンやマーケットの天下統一を狙うような、究極の仕事人向けではないので安心して欲しい。どこにでもいる、普通のあなたが少しつまずいているのなら、そこから抜け出すヒントとなるかもしれない理論だ。その一部を紹介しよう。

あなたに足りないのはココ!

 仕事の悩みといえば、売り上げが上がらない、職場の人とうまくいかない、トップの意向に同意できない…。それぞれ別個に見える問題だが、あることを変えれば解決の糸口が見えてくる。それは心の「あり方」。

 ビジネスはロジカルな場で、メンタルだの根性だの感情的なことは御法度である。だがシャーマー博士はあえてそこに注目した。その結果、卓越したパフォーマンスを生み出す源泉は、「内面のあり方」にあることを発見した。

 例えば、チームの売り上げが上がらないとき。リーダーであるあなたは、なんとか部下への接し方を変えてみたり、新しい売り方を導入するかもしれない。けれども、「態度・行動」を変えただけでは、限界がある。本当に変えなければならないのは、あなたの「意識」だからだ。

 人は合理的判断をしているようで、実は感情が正しい判断の妨げをしていることが多い。部下がせっかく企画書を出してくれても「また的外れな企画を出して……」と心のなかでつぶやいて見たり、外回りに出かける姿を見ても「どうせ今日もろくに成果を出さない」などと、勝手に色眼鏡で見てしまう。そこでひとまず、自分の「思考のおしゃべり」を止め、ひたすら観察することに注力して欲しいと。

 ここまではコーチングなどで言われる「傾聴」の理屈と一緒かもしれない。だが、「U理論」の真骨頂はここからだ。

考えるな、感じろ!

「思考のおしゃべり」を止めると同時に、さまざまなものも手放すのだという。失敗するかもしれない不安や、人に嫌われるかもしれない恐怖、プライドが傷つく困惑。それまで自分を築き上げてきたもの一切を手放す覚悟をしたとき、新しい何かが自分のなかで開けるのだという。

 よく「修羅場をかいくぐる」と「一皮むけた」とか「腹が据わる」という。このプロセスを体系化したのが「U理論」である。アルファベットのUの文字のごとく、一度自らの谷間に転落し、自ら這い上がる力を得るのだ。この自分を一度手放す作業までを「センシング」。そして新しい何かが開けたことを、「プレゼンシング」と呼ぶ。谷間に落ちるといっても、心配はいらない。修羅場ほどの体験をしなくとも、発想の転換・イノベーションは起こせるのがこの理論なのだ。

 新しい境地へと到った人の心境は、いわば「深い静寂と一体感」。ここまで到達すれば、自分のなかに湧き上がるインスピレーションにゆだねるだけだという。次の「クリエイティング」というプロセスに移行する。
このマインドの変化はビジネスマンというよりも、まるで禅修行や武芸の達人のようで興味深い。

 「U理論」とは、目標に向かい一直線に成長する手法ではない。ひらめきや思いつきを大切にする。今までの常識とはかけ離れた手法である。けれど国際的な様々な問題解決にも用いられている手法である。アフリカのアパルトヘイト問題やコロンビア内戦の復興など。

 原書がアカデミックな内容だけに、「具体的にどう理論を生かすか?」が目に見えなかった人も多いだろう。その点、本書は一般的な読者目線で書かれているため、応用の仕方もイメージしやすい。挫折したあなたにも、もう一度手にとって欲しい「U理論」本である。

文=武藤徉子