現実は少女漫画よりも甘い!? イケメン王子に告白された喪女の初恋を描く『少女漫画のはじめかた』

マンガ

更新日:2016/2/3


『少女漫画のはじめかた』(筒井美雪/白泉社)

 自意識って、厄介ですよねえ……。

 自己評価が高すぎても低すぎてもめんどくさい。謙遜も度が過ぎるとまわりの人を傷つけるのだと気づかず「私なんか」「私なんて」が口癖だった過去の自分はマジで殴ってやりたいですが、適度な自信なんてどうつけたらいいのかわからずこじれていくのが現実。たぶん解決法はただひとつ。自分に向けられる「好き」を素直に受け入れて、自分も素直に「好き」を返すことだけなんだなあ……としみじみ感じ入ってしまった漫画が『少女漫画のはじめかた』(筒井美雪/白泉社)です。

 「喪女の恋決定版」と帯に銘打たれたこの漫画、その文句どおり、オタクでモテない女子高生・鶴子がはじめて恋をする話。教室で漫画をうずたかく積んで友達ときゃっきゃっする横で「うわーオタク」と笑われている様は、自身の高校時代をほうふつとさせられて若干遠い目になりかけましたが、そんな彼女を見初めたのがなんとクラスのイケメン王子・水嶋くん。クラス内ヒエラルキーの格差が身に染みている鶴子は、彼の告白にすぐさま「罰ゲームですか? 人違いですか?」と返してしまう疑心暗鬼っぷりですが、水嶋くんはめげずに鶴子にぐいぐい迫っていきます。

advertisement

 いやまあ、オタク女子でなくても、キラキラ輝いているリア充グループに属しているんじゃない限り、話したこともない王子様に告白されたら、喜ぶよりもまず「えっ、なんの罠!?」と怯えるのが通常な気はします。自分を普通以下と認識している鶴子ですから、なかなか水嶋くんの気持ちを信じることはできないのですが、彼の人となりを知るうちにどんどん心を掴まれていき動揺する様子は初々しくてかわいいですし、「もし告白が本当なら私の態度はクズだ……!」と気づいて狼狽えるのもちょっと笑えます。

 ですが何より、この漫画でいとおしいのは、誰の前でも態度を変えない鶴子の素直でまっすぐな姿。陰口をいわれても「いろんな人がいるから、わかってもらえる人と話せればそれでいい」と笑える強さは、水嶋くんでなくても惹かれてしまう魅力です。「私なんて」とただいじけるだけでなく、地味で冴えない自分を知っているからこそ、できる範囲でいつでも一生懸命、人にやさしくしたりクラスのために奔走したりする鶴子だからこそ、その恋を応援したくなる。自分も一歩前に踏み出してみようと勇気さえもらえるのです。

 個人的には、おそらく水嶋くんもイケメン&王子スマイルの陰に隠れているだけでなかなかの変わり者だと思うので、鶴子に連れまわされてディープな世界に足を踏み入れた彼が、今後どのような進化を遂げていくか楽しみです。ある意味天然同士な2人の恋の行く末をぜひ堪能してみてください。

文=立花もも

白泉社の12月おすすめ書籍を紹介中!