ブレストとも違う…ヒット商品を生み出す「ワイガヤ」って何?

仕事術

2015/12/10


『ホンダ流ワイガヤのすすめ 大ヒットはいつも偶然のひとことから生まれる』(本間日義/朝日新聞出版)

 「ワイガヤ」。語源はワイワイガヤガヤ。これは、フィットなどのヒット商品を世に送り出した自動車メーカーのホンダ(本田技研工業)が、長年にわたり大切にしてきたコミュニケーション方法だ。文字通り、社員が集まってワイワイガヤガヤと話をするのだが、通常の会議で行われるようなブレスト(ブレインストーミング)とは異なる新しいコミュニケーション術。このワイガヤを経て、1981年にシティ、2001年にはフィットを発売し、どちらも記録的なヒット商品となった。

 そんなホンダ独自の手法であるワイガヤを紹介しているのが『ホンダ流ワイガヤのすすめ 大ヒットはいつも偶然のひとことから生まれる』(本間日義/朝日新聞出版)。ホンダで約40年間にわたり自動車開発に携わった著者が、自身の経験を織り交ぜながら、斬新なアイディアが生まれたプロセスを解説している。

 ワイガヤとは具体的にどんなことが行われるのだろうか。「さすがに会社で、ただワイワイガヤガヤ話すなんて無理でしょ」と思った人もいるのではないだろうか。しかし、ホンダでは本当に、このワイワイガヤガヤ話す時間を、正式な業務として長年取り入れているようだ。

 では、なぜワイガヤがそれほどまでに大切なのか。それは、様々な人の意見が上手に絡み合った結果として、イノベーションが生まれるからだ。例えば、開発関係者などがたたき台となるようなアイディアを出し、そこから様々な分野の人が知恵を出し合う。すると、知恵が知恵を呼び、一人では思いつかないようなアイディアへと昇華していき、これが革新的な商品の開発につながる。著者はこの原理を「スパイラルアップ」と呼び、これこそがイノベーションの原理だと述べている。

 ここで、ワイガヤの具体的なやり方を簡単にご紹介しよう。まずはメンバーの選定。話し合いを活性化するために、職種、年齢、性別などがバラバラの人を集め、可能であれば自分の考えを積極的に述べることのできる「発信型」の人を選ぶ。次に場所。ワイガヤで大切なのは、参加者がリラックスして、自由に発想できるような場なので、社内の会議室ではなく、旅館や保養所、または社外の会議室などがオススメだそう。服装はカジュアルに、場合によってはお酒を飲みながらでも問題ない。

 会話をする時には、すぐに結果を出そうとせずに、雑談から始めて、ゆっくりと自由に話をすることが大切だ。著者によれば、リラックスして思う存分話をするために、ワイガヤは一回あたり3~4時間程度かけるのが理想的だそう。人格を否定しなければ年齢やポジションに関係なく相手の意見を否定するのもアリで、いわゆる予定調和とは対極の状態。リーダーは、全員が自分の意見を思うままに話せるよう、時には場を和ませたり、時には話をまとめたりしていく。

 実際に会社員をしていると、「業務時間をとりとめのない会話に割くなんて無理!」と思う方も多いだろう。しかし、何となく定例化している会議や、無駄に長い会議をなくしていくと、それなりに時間はできそうだ。ましてや、それで世の中に革命を起こすようなアイディアが生まれるのなら、どうにかして時間を確保するべきだろう。インターネットやパソコンが普及し、隣の席の人にもメールで連絡をしたり、効率化が重視されたりする時代でも、素晴らしいアイディアを生み出すのに近道はないのだ。いつの時代も大切なのは、お互いに膝を突き合わせ、時間をかけて話をすることなのかもしれない。

文=松澤友子