『あまちゃん』『ごちそうさん』をNHK朝ドラの視聴率比較がおもしろい!

テレビ

公開日:2015/12/12


『朝ドラの55年 全93作品完全保存版』(NHKドラマ番組部監修、NHK出版編/NHK出版)

 現在放送中のNHK連続テレビ小説『あさが来た』。週間平均視聴率20%超えが続き盛り上がっている。朝ドラはいつの時代も注目の的だ。どんなストーリーなのか、いつ・どこが舞台なのか、誰が主人公を演じているのか。おもしろければもちろん話題になるし、おもしろくなくてもそれが話題になる。ときには『あまちゃん』のように社会現象となる。朝ドラ自体がドラマなのだ。

 そんな朝ドラの歴史をひもとく書籍が満を持して発行された。『朝ドラの55年 全93作品完全保存版』(NHKドラマ番組部監修、NHK出版編/NHK出版)である。出演者や演出家、脚本家などのインタビューが掲載され、朝ドラの裏話が満載だ。

 最も見応えがあるのは、やはり全93作品のストーリー、見どころ、エピソードをまとめたダイジェストだろう。1961年、白黒テレビの時代に始まった第1作『娘と私』から第93作となる『あさが来た』までの変遷をたどることができる。

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 私事で恐縮だが、リアルタイムで見た最も古いドラマが1992年に放送された『ひらり』。主題歌はドリームズ・カム・トゥルーの「晴れたらいいね」。小学生のとき、これが流れるとバタバタと家を出ていた記憶があって懐かしい。2ページ前に戻ると1991年の『君の名は』が紹介されている。一世を風靡した名作だが、平成に入って放送されていたことを知らず驚いた…。先のページに進むと三倉茉奈・三倉佳奈が主人公2人の少女時代を演じた1996年の『ふたりっ子』が。河合美智子扮する“オーロラ輝子”の写真を見て、当時主人公らをしのぐ勢いで人気を博したことを思い出した。2001年『ちゅらさん』の沖縄の海を背景に展開する恋物語がバイト先で流行って、録画したビデオ(まだCDとかDVDじゃなかった)が出回っていたなぁ…などと、読み出したらキリがない。ドラマとともに自分史まであれこれと蘇る。

 また、パラパラとページを眺めていておもしろいのが、初回視聴率、最高視聴率、平均視聴率のデータだ。昔何気なく目にしたドラマは、『あまちゃん』や『ごちそうさん』よりはるかに視聴率が高いからだ。まず、『あまちゃん』の視聴率を超えた『ごちそうさん』は次の通り。

2013年『ごちそうさん』   初回22.0%、最高27.3%、平均22.3%

 これに対して、『あまちゃん』以前の20作品ほどの初回・平均視聴率は10%台をふらふらとしている。だが、2000年代初頭のドラマはこの『ごちそうさん』なみの20%台が並ぶ視聴率だ。例えば『私の青空』『さくら』『こころ』などだが、失礼ながらそこまで流行っただろうかという印象は拭えない。さらに遡って1990年代には、初回視聴率・平均視聴率30%台はもちろんのこと、最高視聴率が40%台に及ぶものもある。1980年代になると、平均視聴率が軒並み40%前後。そして、1983年4月から放送された伝説的ドラマは、朝ドラのみならず、統計史上テレビドラマの最高視聴率記録をはじき出した。

1983年『おしん』      初回39.2%、最高62.9%、平均52.6%

 参考までに10年ごとの作品の視聴率を挙げてみる。

1970年『虹』        初回37.3% 最高48.8% 平均37.9%
1980年『なっちゃんの写真館』初回38.0% 最高45.1% 平均39.6%
1990年『凛凛と』      初回29.4% 最高39.5% 平均33.9%
2000年『私の青空』     初回23.9% 最高28.3% 平均24.1%
2010年『ゲゲゲの女房』   初回14.8% 最高23.6% 平均18.6%

 「ゲゲゲの~」が流行語となった『ゲゲゲの女房』も過去の作品の視聴率にまったく及ばない。2000年代半ば以降はこの低空飛行が続いていたが、『あまちゃん』以降、初回・最高・平均すべて20%台をマーク(『まれ』の平均視聴率のみ19.4%)。こうしてみると、ヒットが続いているというより朝ドラの視聴率が回復しつつあると考えるほうが、もしかすると正確なのかもしれない。

 さて、『あさが来た』の視聴率はどこまで伸びるのか、新たな伝説を生み出すことができるのか。朝ドラの100年史が出た際には、その中で多くページを割かれるドラマとなることを期待したい。

 

文=林らいみ