婚活アラサー女の心をブッ刺す! 『東京タラレバ娘』被害者たちのホンネ
更新日:2016/1/8
「タラレバばかり言ってたらこんな歳になってしまった」というモノローグからはじまり「酔って転んで男に抱えて貰うのは25歳までだよ」 「回転寿司なら取り逃がした皿もまた回ってくるけれど現実の男はそうはいかない」「オリンピックの頃には40歳でニートレバ?」などのセリフが、女性たちの心に矢のごとく突き刺さる人気漫画『東京タラレバ娘』(東村アキコ/講談社)。第1巻発売直後から多くの独身アラサー女の悲鳴とともに話題となっている同作ですが、その第4巻が12月11日に発売されました。
登場人物は、脚本家の倫子、表参道でネイルサロンを経営する香、居酒屋の看板娘小雪……全員33歳、独身! 「キレイになったら結婚できる」「あのとき別れなければ」、そんな「タラ」と「レバ」をつまみに、毎晩こじらせまくりの“女子会”を開く3人。そんな女子会には、ヒマだからなんとなく飲みたい時の「第1出勤」、仕事のグチを聞いて欲しい時の「第2出勤」、誰かの悪口をブチかましたい時の「第3出勤」、男絡みの緊急事態発生時のみ発令される「第4出勤」の4つのネーミングが。いつものように女子会中の3人の前に、現れたイケメンモデル・KEY。その年下男に「このタラレバ女!」と吐き捨てられ、それぞれに転換期が訪れる――。
『東京タラレバ娘』を読んで阿鼻叫喚したアラサー女は数知れず。そこで今回は、都内で一人暮らしをしている独身女性を集めて座談会を敢行! タラレバ女を自称する彼女たちに『東京タラレバ娘』から受けた深い傷について語ってもらいました。
香澄(28):アパレル勤務。休日の過ごし方は、好きなバンドのライブに行く。『東京タラレバ娘』のなかでは、サバサバしているように見えて一番ジメッとしてる〆鯖女・小雪とメンタルが同じ。彼氏なし。
キリン(30):美容関係。休日は女友達と会ったり、買い物をして過ごす。鎌田倫子のように乙女チックな面があり、少女漫画が大好き。彼氏なし。
桜(28):保険営業。最近は読モアイドルに夢中で、週末は彼らのイベントに費やす。タラレバでは香に似たものを感じている。彼氏なし。
なおみ(29):販売。休日は漫画や映画を観て過ごすインドア派。『タラレバ娘』のキャラでは、ネイリストの香に親近感が湧いている。彼氏なし。
――みなさん、『東京タラレバ娘』の愛読者ということですが、彼女たちのように定期的に集まる女子会メンバーはいますか?
キリン:私となおみは学生時代からの友人で、私たち2人とほかの友達5人でよく集まります。LINEのグループ名は「下衆会」です。
――スゴいネーミングですね。
なおみ:月に一回下衆会を開いてて、話す内容は読んで字のごとくゲスい話がほとんどですね。基本的に彼氏とか気になる男の子のことを話すんですけど、最近一人下衆会を卒業して4人になりました……。
香澄:卒業の理由は……?
キリン・なおみ:結婚です。
全員:……。
桜:私も、社会人になってから友達になった子と数人で月に一回集まってます。LINEのグループ名は荒れてるアラサーで「荒サー」。
キリン:そのネーミングセンス(笑)!
桜:荒んでますからね。下ネタばっかり話してるんだけど、最近は歳のせいか病気とか生命保険の話とかしてる……。
香澄:もうそんな歳だよね。
桜:健康の話が一番盛り上がりますよ。
――なにやら沈んできましたが、気を取り直して。みなさんはタラレバを読んで“心をえぐられた”シーンやセリフあるそうですね?
なおみ:私は、第2巻(P153)でKEYくんと倫子がセックスしたあと「あの瞬間だけは…愛されてるって感じたの(中略)セックスってそういうことでしょ!? 違うの!?」って叫んで「違うタラ(中略)あれは愛の行為なんかじゃない」ってタラとレバ(※)に一刀両断されるシーン。じつは私、セフレみたいな関係の男性がいるんですけど、私は付き合いたいんだけど「ずっと一緒にいたいから」って言われてフラれたんだけど、体の関係だけは続いてるんですよ……。でも、一緒にいて楽しいし大事にされてるって思いたい自分の気持ちともろかぶりしてキツかった。
※タラとレバ:タラレバ娘たちが酔いつぶれると現れて、彼女たちに厳しい助言を言いまくる幻覚。
桜:めっちゃツラい! それ大事にされてないよ……。
なおみ:えっ!
キリン:直球(笑)。
香澄:私もこの前後のページが刺さった! セックスの下りの前に「女は結婚すればセコンドにまわって旦那さんや子供をサポートして生きていくんレバ」とか「女は結婚しないと引退できない」ってタラとレバに言われて、仕事と女の戦場は違うっていう現実をつきつけられたみたいでイヤだったな。
桜:恋愛だけじゃなくて、仕事とか人生系の救いようのないエピソードも多いですよね。ピンチヒッターの脚本を倫子さんが頼まれたときに「ピンチがチャンスなのは若いうちだけ 新人じゃないんだから結果出せて当たり前」(第3巻P37)っていうセリフを読んだとき「うわあぁああああ!」って悲鳴をあげた。
キリン:たしかに、頑張って働いてるアラサーに厳しいよね(笑)。私は、1巻のなかで、10年前にフッた早坂さんと倫子のやりとりが全体的に恥ずかしかったな。同じ経験があるわけじゃないんだけど「この人、もしかして私のこと……」みたいな自意識過剰になることはあるなって思って、それに気づかずにアラサーになっちゃうのはイタすぎる。
桜:そうそう。それで緊張して「笑わないでくださいね」って早坂さんに言われて「もう笑いません!」って余裕ぶるの!!
なおみ:答えを用意して余裕ぶる顔!
香澄:心のなかは乱れまくってるのに、冷静を装うアラサーの顔してる!
桜:こういう顔とか行動を、気づかないうちに日常でしちゃってるんじゃないかなって思ってすごく刺さった……。
全員:……。
なおみ:女子会ってワーって盛り上がってから、なぜか落ちるタイミングがあるよね(笑)。
――落ち着いたところで次の質問なんですけど、これまでに思わず「タラ」とか「レバ」を考えてしまった実体験はありますか?
桜:最近ありました……。高校時代、バスケ部にめちゃくちゃイケメンの男子がいたんだけど、当時は向こうに彼女がいたから連絡先も聞けずに卒業したんですよ。でも、社会人になってからFacebookを通して「同じ高校だったんだけど覚えてる?」ってメッセージが来たんです!
香澄:おお!
キリン:めっちゃテンション上がる!
桜:それから、2人で飲みに行くことになって久々に会ったんだけど、さらにかっこよくなってるし、話もおもしろいし完璧かよって感じ。惚れなおしてたら「高校のとき、ずっと気になってたんだよね」って言われて、私も連絡先聞こうと思ってた! って伝えて10年越しの想いが共有されたんです。それで、まあ……ヤッちゃいますよね。
なおみ:展開早っ! さすが大人(笑)。
桜:でも、付き合うには至らなかったんですよ。そのあとも何度か会って、今後についても話してみたんですけど、向こうが大阪に異動になるから付き合えないって言い出したから「遠距離でも私は大丈夫!」って食い下がったんだけど、ダメでした。
なおみ:切ない! 正直、遠距離とか気にする年齢でもないしね。
桜:じつは、続きがあってね。それから一カ月後のFacebookのタイムラインに、彼の白タキシード姿がアップされたんです。
なおみ・キリン・香澄:えーーーーーー!!!!!
キリン:Facebook怖い。
桜:私と再会したときには婚約者もいて、結婚の日取りも決めてたんだって思ったら、涙も出なかった! それで、一人で日本酒を飲みながらタラレバを考えちゃったんですよ。高校のときうまいこと捕まえて「レバ」、それで長いこと付き合って「タラ」結婚できたかも、みたいな。
なおみ:えっ! そんな目にあったのにそんなこと思うんだ?
キリン:結構なクズだよ、その男!
桜:そうなんだけど、可能性があったのに付き合えなかったのが悔しいんだろうね。顔は今もドストライクだし、ちゃんと定職にも就いてるし。正直、自分が奥さんの立場だったとして、旦那に私みたいな残念な女がいてもバレないようにしてくれれば構わないですね。
香澄:そこはドライなんだ。
なおみ:久々にヤバい女に会った気がする。
桜:初対面なのにヤバい女呼ばわり(笑)。
――なかなかのタラレバですね……。現在進行形で酸いも甘いも経験しまくってるみなさんですが、アラサーを迎えてから周囲の変化を感じることってありますか?
キリン:最近、桜さんみたいな“ヤバい女”が減った気がします。昔は「今誰と付き合ってる?」とか「今の彼氏は~」みたいな話をまっさきにしてた子が、家庭に入ると落ち着いちゃうのが寂しい。
桜:そうそう、独身のそういう話って既婚女性もドン引くじゃん。そうなってくると、独身の肥溜めみたいな会合が頻繁になっちゃうんですよね。
香澄:私の周りというか、2歳下の妹が結婚しそうなんです。大学時代から付き合ってる彼氏がいて貯金もある、しっかり者の妹と、かたや姉の私は、好きなバンドのライブだとかフェスだとか言いながら、汗だくでライブハウスとか通って金もない。彼氏もいない! 親の目が厳しい。
なおみ:妹さん、王道だね。うらやましい。
――ちなみにみなさんは、『タラレバ娘』を読んで変わったことってありますか?
なおみ:それが、ないんですよ。……まだ大丈夫って思ってる(笑)。
全員:(笑)
香澄:でも、すっごいわかる!! だってまだ28歳だから、33歳のタラレバ娘たちよりはマシ! みたいな。
キリン:こんなこと言いながら、このまま33歳になってる気もする。でも、ずっと気になってたんだけどタラレバ娘たちってお金持ってますよね?
なおみ・香澄・桜:そうそう!! 金がある!
キリン:金があるから毎晩のように集まれるんだよね!? 手に職を持ってて頻繁に酒が飲める環境があるこの人たちのほうが断然幸せだと思う。それでいて、みんな美人だから不倫とか元カレとかだけど、エッチする相手がいるだけ恵まれてるのでは?
なおみ:KEYくんとエッチできたら、それだけで一年の糧になるよね(笑)。その先なんか期待しないよ!
桜:そう考えると、自分が33歳のときにこの人たち(タラレバ娘)みたいになれてる気がしない……。私なんか、お金なさすぎて暗い部屋で「お腹すいた」って号泣したことあるもん。
なおみ:金も男もない『タラレバ娘 地獄編』が読みたいです。
香澄:いや、みんな落ち着いて。多分何も持ってない女が主人公だと希望がなさすぎるんだよ。これは、なんとなく成功してるけど愛がない人たちの物語なんだよ、きっと。
キリン:そうか……。
最終的に、漫画の登場人物を僻むという形で終焉を迎えたタラレバ座談会。やはり『東京タラレバ娘』は、噂に違わずアラサー女たちの心をえぐりまくっていることがよくわかりました。第4巻では、一体どんなセリフで攻め入ってくるのか、読む覚悟がいりますね…。
文=不動明子(清談社)