「訳あり物件」の実態・回避法・交渉術をまとめた一冊 ―不動産契約で後悔しないために

生活

2015/12/21


『訳あり物件の見抜き方:知られざる実態から回避法・交渉術まで』(南野真宏/ポプラ社)

 不動産の賃貸や売買契約を結ぶにあたり、誰もが気にするであろう「訳あり物件」。それなりの金額を支払うのだから、予算内で最高の物件を見つけたいと思うし、訳あり物件なんてもってのほかだ。しかし、具体的にどんなことを注意すればいいのか、万が一、訳あり物件に遭遇してしまった場合はどうすればいいのか、分かっている人は多くないと思う。実際、私自身も数々の賃貸契約を結んできたが、実は訳あり物件についてあまり知らなかった。

 そこで、訳あり物件についての知識を深めたいと思っている人に、ぜひ参考にしていただきたいのが『訳あり物件の見抜き方:知られざる実態から回避法・交渉術まで』(南野真宏/ポプラ社)だ。

 「訳あり」と聞いて、まず連想するのは、過去に自殺や殺人などが起こったいわゆる事故物件ではないだろうか。確かに、これから住む場所で見知らぬ誰かが無念の死を遂げたとなると、色々と余計なことを考えてしまいそうだ。事故物件の情報をまとめたウェブサイトが存在し、バラエティ番組でも時々取り上げられることを考えると、注目度が高いことが分かる。

 しかし、生活の場となる住まいで、問題となるのは過去の事件だけではない。数々の訳あり物件を経験してきた著者によると、訳ありになる要素は大きく分けて4つあるそうだ。

 まずは事故物件(1)。これは物件の過去に問題があり、住人に心理的な影響を与える可能性がある。また、最近たびたびニュースでも取り上げられた近所の騒音問題(2)は、物件を取り巻く周辺環境に問題があり、住人に影響を与えると考えられる。さらに、建設から時間が経過し、現在の法律には準拠していない場合(3)などは、法的に問題のある物件に分類される。最後に、地盤沈下や耐震偽装など、土地や建物に物理的な問題のある物件(4)も、訳あり物件だ。

 では、このような訳あり物件を回避するためには、どうしたらいいのか。本書では、まず「告知事項」を確認することが提案されている。訳あり物件のごく一部しか含まれてはいないが、物件の紹介記事の備考欄をチェックしてみよう。そこに記載されている内容で、気になる部分があれば、不動産業者が説明してくれることもあるが、基準が曖昧であるため、できれば告知事項のある物件は避けるのがオススメだそう。

 訳あり物件の知識を得て、自分なりにチェックしたにもかかわらず、住んでみたら問題に気づくケースもある。そんな時は、場合によっては裁判ということになるが、その際に何気ない一言があなたを救ってくれるかもしれない。例えば、契約前のやり取りで、「騒音が激しいなら契約しない」とメールなどで明確に伝えていれば、入居後に騒音が激しいことを理由に訴えを起こした時に、認められる可能性が高まるのだ。

 つまり、少しでも気になることや、心配なことがあれば、必ず契約前に確認することが重要だ。できれば、口頭での確認だけではなく、メールなど残る形にしておくのがベスト。本書には、「NG物件確認チャート」と題して、先に述べた4つの訳あり要素ごとに、具体的な項目が記載されているので、それを参考にしてチェックしてみてもいいだろう。

 不動産物件の賃貸や売買契約を行う限り、いつどこで遭遇するか分からない訳あり物件。少なからず不安を抱いている人は、ぜひ本書を手にとってほしい。また、現在の住まいが訳あり物件かもしれないと感じている人も、本書を参考にして、今後の対応を検討してみてはいかがだろうか。

文=松澤友子