写真を元に人の秘密に迫る!? 「ビブリア古書堂」シリーズ作者が描く、少しビターな青春ミステリー!

文芸・カルチャー

2015/12/21

写真とは、過去の真実を焼き付ける鏡であり、その過去の瞬間へといざなうタイムマシンでもある。古い写真を見返せば、さまざまな思い出が蘇ってくる。それは、決して楽しかった時の記憶ばかりではない。胸の奥に鋭い痛みを感じさせるような辛い記憶や悲しい思い出まで、写真には、さまざまな過去が切り取られている。

三上延氏著『江ノ島西浦写真館』(光文社)は、まるで、古いアルバムをめくる時のように、ちょっぴり苦い青春時代を思い出させてくれる作品だ。三上氏といえば、シリーズ累計600万部を突破した「ビブリア古書堂」シリーズが名高いが、本作は、そんな作者の最新作。「ビブリア古書堂」では、古本屋を営む栞子さんが、「古書」の謎を解き明かす中で人の秘密に迫っていたが、この作品では「写真」がその役割を担う。古い写真館に残された数枚の写真の謎に主人公は迫りながら、その奥に秘められた人間たちの過去をひもといていく。

舞台は江ノ島。ある出来事以降、「写真」の世界から遠ざかっていた桂木 繭は、祖母が営んでいた「江ノ島西浦写真館」を遺品整理のために久々に訪れた。100年間営まれた歴史あるこの写真館は、祖母の死によって閉館することとなったが、注文したまま誰も受け取りに来ない「未渡し」の多くの写真が眠っていた。

「写真」から得られる情報は意外とたくさんある。写された風景や人物はもちろんのこと、撮影方法や現像方法の違い、修整の有無など、手がかりは無限だ。かつて門的に写真について学んだ繭は、持ち前の知識を武器に、写真の謎を解き、写真を注文主へと返していく。その観察眼は、「ビブリア古書堂」の栞子さんに匹敵する鋭さ…! 時代が違う4枚の写真に写る同じ顔の男たち。4年前に繭が「写真」の世界から離れることになった事件の謎。「未渡し」をきっかけで知り合い、写真館の整理を手伝ってくれることになった真島秋孝の不可思議な言動。謎を解けば解くほど、明らかになっていく、祖母と客たちの交流…。
そのなかで、繭は確実に変わっていく。最初は「写真」というだけで毛嫌いし、すべてに対して怯えるような態度を取っていた繭も、物語が進むにつれて、自分の過去と向き合う強さを得ていく。

「お前の写真に人生を狂わされた」
「あなたは、鋭い人だと思う……小さなことでも、見逃さない」
「祖父は亡くなったし、祖母もああいう状態だから、話してくれる人がいなくて。例えば家族に対して、どんな気持ちを持ってたのか……あの写真が、手がかりになるんじゃないかって」

この物語に出てくる人は皆、思い出すのも辛いような過去を抱えている。本を読むこちらにまで、その思いが伝わってきて、胸のうちにかすかな痛みが広がる。しかし、一枚の写真をきっかけに、繭の推理をきっかけに、過去を乗り越え、新しい一歩を歩み出そうとする彼らに次第に勇気付けられる気がするのだ。繭の推理にあっぱれ! 「ビブリア古書堂」ファンも、そうでない人も、ぜひとも手にしたい作品だ。

文=アサトーミナミ