ツイッターで人気の社会心理学者が「レイシズムを解剖する」一冊

社会

2015/12/28


『レイシズムを解剖する: 在日コリアンへの偏見とインターネット』(高 史明/勁草書房)

 近年の日本では深刻な社会問題の一つとなっているレイシズム(人種差別主義)。この問題を扱う書籍は多く発表されているが、ツイッターで人気の社会心理学者による『レイシズムを解剖する: 在日コリアンへの偏見とインターネット』(高 史明/勁草書房)は、今までにないタイプの一冊だ。

 まず一つ目の特徴は、本書の研究法が、数値を用いて分析を行う「定量的研究」であるということ。たとえばツイッターにおける在日コリアンへのレイシズムの分析においては、10万件を超えるコリアン関連のツイートを抽出して実施。そのため、レイシズムの実態が“数値”として可視化されているのだ。

 レイシズムの問題は、印象論で語ったり、個々のケースを拡大解釈して考えたりしてしまいがちだが、それを社会科学的・数値的に分析している点が、本書の新しさ。たとえば「大手マスコミのニュースサイトをよく見る人」「ウェブメディアのニュースサイトをよく見る人」「2ちゃんねる・2ちゃんまとめをよく見る人」の三者において、レイシズムの傾向が強いのは……?というような疑問についても、数値によりその結果が示されている。

 また、本書は博士論文を加筆修正した学術書であるため、レイシズムに関する先行研究が数多くフォローされている点も特徴。特に興味深いのが、アメリカにおける黒人へのレイシズムの研究から生まれた、「古典的レイシズム」「現代的レイシズム」という2つの概念だ。

 前者は、特定人種の容姿や能力を卑下したり、犯罪に走りがちだと決めつけたりする、いわゆるあからさまなレイシズムのこと。対して後者は、「あいつらは偏見や差別がすでに存在しないのに、過剰な抗議や要求を行っている」「本来得るべき以上の特権を得ている」というような信念にもとづくレイシズムだ。

 「在日特権」「生活保護」などの言葉で在日コリアンを攻撃するレイシズムは、まさに後者に当てはまるものだと分かるだろう。レイシズムをこの2つのタイプに分ける考え方は、本書の研究において重要な補助線となっており、日本のレイシズムとアメリカのレイシズムの共通点や相違点についても知ることができる。

 なお、現代的レイシズムに相当する偏見は、女性や同性愛者に対しても起こるとも本書では言及されている。近年は女性差別を是正する動きとともに、「なぜ女性ばかり優遇されるのか」「これは男性に対する逆差別ではないか」のような言動もよく見るようになったが、これも現代的レイシズムと同じ構造で起こっているものというわけだ。

 在日コリアンに対する偏見の研究を主眼においた本書だが、今の日本社会を考える上でも、参考になることは多い。分析方法の説明などではやや難解な部分もあるが、各章・各節の「まとめ」から先に目を通せば、かなり読みやすくなるはずだ。

文=古澤誠一郎