「冷静に見てウチの娘が一番かわいい」爆笑育児コミックで描かれる、赤ちゃんの周囲で狂っていく大人たち

出産・子育て

更新日:2016/3/14


『おたくマンガ家ママデビュー! つっこみが止まらない育児日記』(御手洗 直子/ベネッセコーポレーション)

 子どもの成長は早い。とくに、赤ちゃんの時期は一瞬だ。忙しい育児の最中、なんでもないしぐさや不思議な行動に癒されることがある。「子どもは3歳までに一生分の親孝行をする」などといわれる。親にとって、わが子の3歳までの言動は、一生の宝物になる。

 子どもの“魔性”は、ときに周囲の大人を狂わせることがある。「たまひよ」のwebサイト上で人気連載中の爆笑育児コミックが単行本化された『おたくマンガ家ママデビュー! つっこみが止まらない育児日記』(御手洗 直子/ベネッセコーポレーション)では、かわいいむすめのまわりで着実に“狂っていく”大人たちの恥ずかしい姿がコミカルに描かれている。

 たとえば、わが子が生まれる前に「親バカにはなったりしない」「冷静な父親になる」と宣言していた夫。むすめが生まれて間もなく、「もしかして…うちのむすめさんは、かなりかわいいんじゃないか…?」と早くも怪しい雰囲気を醸し出し、パンパースのCMが流れれば「むすめさんをモデルに出しても遜色がないな」とつぶやくように。やがては「むすめさんのかわいさは、パンパースの比ではない」「うちの子、天才」「うちの子、フェアリー」が口ぐせに。そのうち、容赦ないくしゃみや吐き戻しを顔に浴び、嘔吐風邪をうつされて熱に浮かされながらも、「むすめさんのベノムショックだ…」(ゲーム「ポケットモンスター」に出てくるポケモンの、毒で相手を攻撃する技)とほほえむ。

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 「親バカにならない」宣言をしていた人が、コロッと親バカになる例は、よくある。著者の夫の気持ちに共感する父親は、少なくないだろう。

 自分の母(むすめの祖母)も、やはり狂っていく。家に訪ねてくるなり、「あくまで冷静で公平な目で見てなんだけど」と前置きし、「(小児科でほかの赤ちゃんをいっぱい見たけれど)むすめがいちばんかわいかった」と、うつろな目で言う。実家に帰るたびに、見たことがない玩具や絵本など、何かが増えている。玩具がかぶる。

 かくいう著者自身は、気づけばケータイの待ち受け画面がすべてむすめになっている。気を抜くと、むすめのほっぺに吸い付いており、家族にとがめられる。

 赤ちゃんが引き出す庇護欲はかくもすごいものか、とあらためて思わされる。わが子に狂わされた大人たちは、時が過ぎて昔を思い出したとき、自分の言動も含めて宝物になっているのか、もしくは、そこだけは消し去りたい黒歴史になっているのか。本人にしかわからない。

文=ルートつつみ