半人半鳥のヤマトタケル、観光好きなエビス様…フリーターとモフモフ狐神が活躍する『神様の御用人』最新5巻発売!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/16

 普段はめったに神社など訪れないが、新しい年になり、初詣に出かけたという人も多くいることだろう。もし、そんな現代人の姿を日本の神々が本当に見ていたとしたら、どう思うだろうか。もし、本当に神様がいるとしたら、年の始めだけいきなり現れて不躾に祈りを捧げる人間たちに、困っているかもしれない。神様も、人間のように、いろいろな悩みや願いを抱えていたっておかしくはないはずだ。

 そんな神様の願いを聞いて回る人間がいたとしたら…? 浅葉なつ氏の「神様の御用人」シリーズ(メディアワークス文庫)は、ひょんなことから古事記や民話に登場する神様たちの願いを聞いてあげる「御用人」になってしまったフリーター・萩原良彦の物語。人間以上に人間味あふれた神様の悩みを解決すべく主人公たちが奮闘するこのシリーズは、累計発行部数90万部を突破。「B’s-LOG COMIC」にてコミック化もされるなど、大きな話題を集めている。そんなシリーズの最新刊第5巻がついに発売。特殊な力もない、不思議な道具も持たない、ごく普通の人間・良彦は、神様の願いを叶えることができるのだろうか。5巻も目が離せない展開が続いていく。

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 前巻、無事に「御用人」本採用になった良彦の前には、日本の英雄・ヤマトタケルノミコトやエビス様こと蛭子大神など超有名な神々が現れる。しかし、神様たちは、みんな、とってもおちゃめ。ヤマトタケルノミコトは「顔だけ人間」という半人半鳥のおかしな姿をしているし、鯛柄の着物に赤い風折烏帽子というイメージそのままの恰好のエビス様もユニバーサルスタジオジャパンや通天閣などあらゆる場所を楽しそうに観光している。良彦の親友で権禰宜宮司の孝太郎に恋い焦がれる乙女な神様も登場!? 「神様の威厳はどこへやら…」と思わされるが、彼らの姿や行動には、彼らの悩みを解くカギが隠されているのだ。神様だって、人間と同じ。誰もが忘れられない過去に苦しみ、悩んでいる。そんな神様たちの願いを叶えるために、良彦は奮闘する。相棒の、モフモフとした狐の姿をした方位神・黄金ももちろん登場。生まれつき神様や精霊などが見える「天眼」の能力を持つ女子高生・吉田穂乃香の助けを借りる中で、2人の距離が急接近!? 良彦は神様にとって都合の良い単なる「使いっぱしり」のようにも思えるが、読み進めれば読み進めるほどに、神様たちと人間との強い絆が感じられる。思わずくすっと笑ってしまったり、かと思えば感涙させられたり…。ほんわか胸が温かくなる。

 神様、というと、何だか遠い存在のように思えるが、もしかしたら、本当は、身近な存在なのかもしれない。現に、昔は、人と神様の距離は近く、ともに支えあって存在していたのだろう。古事記や日本書紀、民話などなかなか目にする機会はないが、この作品を読みながら、「目に見えないけれど、近くにいる」と思うと、何だか心強い気持ちになる。読み終えた頃には、思わず神社巡りに出かけたくなってしまうに違いない1冊だ。

文=アサトーミナミ

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