猫の顔見りゃ街の空気がわかる! 街歩き気分を堪能できる『ニューヨークの看板ネコ』

文芸・カルチャー

2016/1/21

 ニューヨーク市といえば、800万以上の人口を誇るアメリカ最大の都市であるとともに、ネズミ天国としても知られています。一説には人口と同等、あるいやそれ以上のネズミが生息しているとかなんとかで、2015年にニューヨーク市当局に寄せられたネズミに関する苦情は2万4000件を超え、過去最高を記録したという報道まであるほどです。

 そのおかげか、ニューヨークの店舗ではネズミ退治のために猫を飼う例も多いそうで、代々同じ店に住まう猫や、オーナーが代わっても、そのまま看板ネコとして暮らす猫がいるのだとか。家ならぬ「店」につく猫というわけです。そんな異国の猫事情を教えてくれる猫写真集が44匹の「看板ネコ」たちを紹介する『ニューヨークの看板ネコ』(仁平 綾/エクスナレッジ)であります。

 いずれの猫も、どことなくキリッとした表情で、「仕事中!」といった雰囲気を漂わせています。これから常連になる上客なのか、それとも一見さんなのか、見さだめているようにも思えます。猫たちが行住坐臥するお店の業種や、性別・性格などの違いがあるはずなのに、不思議なもので、どの猫たちも一端のビジネスマン顔というか、古書店のベテラン店員さん顔というか、静かな表情とたたずまいにもかかわらず、きっちりとした仕事をする”できる店員”風に見えるのは、ニューヨークという街の雰囲気を、猫たちが自然と感じ取っているからなのかもしれません。



 猫の立場で想像するならば、いいお客かどうかは、たくさん買ってくれる人でも、足しげく通う人でもなく、猫自身にとって心を許せるか否かでしょう。本書に登場する看板ネコのなかには、猫らしい偏向来店者フィルタリングを駆使して、男性客にはすぐ甘える猫もいれば、苦手な子供には猫パンチで応酬する猫も。長生きの看板ネコも散見され、生粋のニューヨーク生まれニューヨーク育ち、球場から歩いて帰れるやつはだいたい友達といった貫禄さえ漂います。



 でも、著者の仁平 綾さんのあとがきによれば、この書で紹介された看板ネコは、ほんの序の口。

残念ながら、本書では紹介できなかった猫たちもいます。なかなかいいカットが撮れずに、泣く泣く掲載を見送った看板猫や文章にするほどの猫ストーリーが取材できなかった猫たち。

 『ニューヨークの看板ネコ』をガイドブックに、ニューヨークの空気を体現する猫たちに出会う楽しみは、まだたんまりと残されているようです。


 一部で人気を博している「じゅん散歩」の特番でニューヨーク編が企画された際には、『ニューヨークの看板ネコ』で紹介された店々を訪ね、「はじめまして、私、ジョニー・デップと申します。ずいぶん毛深いお店の人ですね~」と挨拶して、猫に冷たい顔をされるという、夢のコラボを一方的に願う次第であります。

文=猫ジャーナル