会社の名刺でもできる? 相手に覚えてもらえる名刺の作り方

ビジネス

公開日:2016/1/29


『1秒で10倍稼ぐありえない名刺の作り方』(高木芳紀/インフォトップ出版)

 社会人必携のアイテムといえば?と聞かれれば、人によって答えは様々だろう。スーツやネクタイといった服装を答える人、車や時計といったこだわりの見えるもの、あるいは向上心や謙虚さといった精神的なものを挙げる人もいるだろう。

 この問いへの答え自体、その人を表しているともいえるが、それよりもいっそうその人となりを表すものが存在する。それが、「名刺」だと『1秒で10倍稼ぐありえない名刺の作り方』(インフォトップ出版)の著者であり、名刺アドバイザーの肩書きを持つ高木芳紀氏は言う。

 この本で著者の主張していることは明確であり、かつ一点に絞られている。それは、「名刺で目立て!」ということ。まさにこの一点に尽きる。

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 みなさんも経験はないだろうか? 名刺交換をしたはいいものの、その名刺をどこかにやってしまったことが。あるいは、溜まった名刺を整理しているときに、その名刺を見ても誰だか全くわからないことが。私はありすぎて困っている。

 逆に言えばこれはチャンスだ、と著者は言う。多くの人が没個性的な名刺を使っている中、自分だけが特徴的な名刺を使えば、当然目立つ。目立てばそれだけ相手の覚えが良くなる。覚えが良くなれば仕事が円滑に進む、とまぁ、さすが名刺アドバイザーと言わんばかりの名刺推しだが、自分にも身に覚えがあるだけに説得力がある。

 でも会社の名刺でふざけるのはちょっと…という抵抗感も著者は織り込み済み。そんな人に対する具体的な名刺の作り方まで教授してくれている。著者が挙げる一番のポイントは、自分の顔写真を名刺に入れること。それくらいなら、多くの人がすぐにでも実践できることだろう。また、名刺にちょっとした瑕疵を作るのも効果的だという。名刺自体は会社から支給されたごく普通のものでも、そこにほんのちょっと工夫を凝らし、相手にそこを突っ込ませることがポイント。

 具体的には、名刺の角を一つだけ丸く切り取ってみるとか、クラフトパンチを使って名刺にデザイン性を持った穴を開けてみるとか、メッセージスタンプを押してみるとか…。相手に「ん?」と思ってもらえれば、それで名刺としての役割を8割がた達成している。そこから話が広がっていけば、言うことなしだろう。

 この本で紹介するのは、名刺の使い方だけではない。自己プロデュースのための本として読んでも、十分にためになることが書かれている。

 近年はセルフブランディングといった言葉がもてはやされているが、その具体的な方法を、名刺というツールを使ってここまで具体的に書いた本がかつてあっただろうか? いや、ない。特に「名刺は100%受け取ってもらえるコミュニケーションツールである」とは、名刺ならぬ名言といえよう。

 確かに、非常に当たり前のことで見逃されがちだが、よく考えてみるとこれはすごいことだ。多くのビジネスマンは出会って早々に、お互いの名刺を交換する。これはもはやビジネスマナーとも言える。そんなマナー、しきたりの中に、独自にカスタマイズされた名刺をぶっこむ。それがどれだけ強烈な印象をもたらすかを、著者は熟知している。なるほど、名刺アドバイザーの名前は伊達じゃない。

 一途に仕事に邁進するのは素晴らしいこと。でもそこにほんの少しの遊び心が加わるだけで、今している仕事はもっと楽しく、もっと多くの人から評価してもらえるかも。名刺にはそれだけの力があると信じてみてもいいのでは?

文=A.Nancy