<姉>を巡る愛の駆け引きの中で、少年は大人になっていく【大人の男のためのエンタメ小説「ノベルゼロ」創刊】

文芸・カルチャー

2016/2/5


『皿の上の聖騎士<パラディン>1 -A Tale of Armour-』(三浦勇雄:著屡那:イラスト/KADOKAWA)

テーマは、格好いい大人の生き様――。新創刊を迎えた小説レーベル「ノベルゼロ」が送り出すものは、いつか憧れた揺るぎないヒーロー像とハードな人間ドラマだ。大人が惚れる大人の主人公を通して、物語に触れる喜びを追求していく。今回は、そんな「ノベルゼロ」から三浦勇雄著『皿の上の聖騎士<パラディン>1 -A Tale of Armour-』(屡那:イラスト/KADOKAWA)を紹介しよう。

皿の上の聖騎士』は異世界を舞台に剣を片手に伝説の防具を集めていく物語で、さらに霊獣と呼ばれるドラゴンやグリフィンといったモンスターも登場する。まさにドキドキとワクワクが詰まった王道ファンタジーなのだが……ヒロインは蛇であり、恋敵はモンスターである。

主人公アイザック・フィッシュバーンとその姉アシュリーは、救国の聖騎士の血を引く姉弟だ。アシュリーが16歳になり、成人の儀で聖騎士の遺した甲冑を纏ったとき、事件は起こる。アイザックや国王など少数の者が見守る中、甲冑が崩れ落ち、アシュリーが忽然と姿を消した。

実はこの甲冑、本来は聖騎士のものではなく12匹の霊獣のもので、聖騎士は借り受けた代償として100年後に現れる子孫を差し出すという非人道的な取り引きを交わしていた。アイザックは、それを知ったうえで儀式をおこなった国王たちに激怒。12の防具に分裂した甲冑がそれぞれモンスターの姿になって主のもとへ還っていく中、蛇となった頭部だけはアイザックが奪って王城から逃げ出したのだった。

こうしてアイザックは王国に狙われながら、蛇とともに姉の体を取り戻す旅に出るのだが、意外なことに悲壮感は少ない。蛇になったといっても、もともと頭部だったためかアシュリーの意識はあるし、何より二人の絆は物語が進むにつれ、より強固になっていく。

才気溢れる姉を疎ましく思いながらも、姉の危機を前に命を賭す覚悟を決めるアイザック。一度は人身御供を受け入れそうになりながらも、弟の覚悟を目にして生きることを決意するアシュリー。どちらもあまりにピュアで、姉弟愛というにはやや過剰な想いが見え隠れする部分もあるが、そこがまた微笑ましくもあり、ドキドキさせてくれるところでもある。実際、アイザックが奮い立つのもちょっとした下心からで……そこも含めて応援したくなるのだ。

そして、面白いのはアイザックだけではなく、霊獣たちもまた本気でアシュリーを求めているところだ。英雄譚の一種でありながら、壮絶な愛の物語とも捉えることができる。

アシュリーは「聖母」と呼ばれるほどの美貌を持つ女性で、これまで数多くの男を虜にしてきた。霊獣たちもある理由から一様にアシュリーを愛し、アシュリーの体を欲している。だから、アシュリーの話しが通じるモノもいれば、手に入れた体の一部をペロペロしちゃうようなヤツもいて、とにかくいろんな「愛のカタチ」を見せてくれる。モンスターが単にモンスターとして描かれるのではなく、感情のあるキャラクターとして、ある意味、アイザックにとっての恋敵として描かれるのだ。アイザックと霊獣の激しい戦いはもちろん、アシュリーを巡る駆け引きもまた見どころのひとつである。

次巻以降、どのような霊獣が現れ、どのような愛し方をするのか。戦いの中で大人へと成長していくアイザックとともに、霊獣の個性も楽しみにしたい。

文=岩倉大輔